「地方交付税」という言葉は、小中学校の教科書にも出てきました。
「国庫支出金」との違いが教科書の説明では理解できず、もやもやした気分になったことを想い起します。
仕事で地方自治の道を選び、地方自治体の財政部局に三度配属され、地方交付税は身近な存在になったのですが、いまでも十分に理解できているという自信はありません。
なぜそう感じるのかというと、「地方交付税」について、分かり易く説明できないからです。
札幌市で財政局長をしていたとき、市政クラブの記者さんから、「地方交付税って何ですか?」と質問されたとき、的確な答えができず「本当に自分はわかっていないなあ」とつくづく感じ、悲しくなりました。
本当にわかっていないと、平易な言葉で語ることはできないものです。
本書は、この難解な「地方交付税」について、分かり易く語ってくれます。
それは、語り口の妙ではなく、著者が、地方交付税について知り尽くしているからです。
この制度について、徹底的に考え抜き、良いものにするために格闘してきたからではないかと思います。
多少は知っているつもりでしたが、本書を読んで新しい発見もありました。
それは「留保財源」の重要性です。
留保財源率は、自治体関係者から見れば所与の存在で、議論の余地がないのですが、そのありようが交付税制度の根幹をなしていることを改めて認識できました。
おそらく、本書以上に「地方交付税」を分かり易く語ってくれる書籍はないでしょう。
同時に、地方自治体で財政に携わる者に対しても、改めて地方交付税の本質とその存在の大きさ、地方交付税を通して見えてくる地方財政の現在について、大きな示唆と刺激を与えてくれる好著です。