振り返れば、もう何十年もの間、行政組織、公務員制度、さらには政官関係について、改革が繰り返されてきたように思います。
牧原出教授は、「いつ頃からか、こうした改革を抱え込むことが重苦しくなってきたように見える」と観察されます。
「改革が思わぬ結果を生み、コストばかりがかかったり、現場が過重な負担にあえいだり、という事態が目立つようになったはいないだろうか」と。
このような問題意識から出発し、本書では、「制度をどう設計するか、という問いかけの前に、設計された制度がどう作動しているか」を考察の対象とします。
こうして本書では「作動」という言葉が頻繁に登場し、「作動学」による分析が試みられます。
歴代政権において実施された改革は、意図されたとおりに「作動」したのか。
私は、小泉内閣、第1次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、民主党政権、そして第2次安倍内閣の時代、課長、審議官、部長、局長としてその真っただ中にいましたので、たいへん興味深く拝読しました。
牧原教授は、「静かに変化が起こるように仕組まれた改革こそが、成功した改革」であるとし、例として、省庁再編と地方分権改革をを挙げます。
一方で、公務員制度改革については、「過去の失敗事例が関係者の間でそもそも共有されて」おらず、改革を牽引する集団は「その制度が果たして当初の目的を達成できるのか、副次的作用をもたらさないのか、またそもそもどうやって既存の運用から新しい運用へと「円滑に移行」できるのか、といった諸点に答えるところがなかった」とされます。
私は、公務員制度改革には直接は関わりませんでしたが、その過程をごく近くで見ていた者として、同じ印象を持ちます。