折しも、安倍総理がプーチン大統領と会談され、二島先行返還論がマスメディアなどで議論されている中、タイムリーな読書体験となりました。
ここのところテレビや新聞によく登場する元外務省欧亜局長、東郷和彦氏の祖父 東郷茂徳 は、太平洋戦争開戦時の外務大臣で、本書にも頻繁に登場します。
サブタイトルに、「戦争と平和の百年」とあるように、幕末における日露の接触に始まり、1950年の東郷茂徳の病没までを描きます。
年代記風の叙述ではなく、それぞれの時代おいて日露、日ソ外交に積極的に関与した政治家に焦点が当てられます。
まず、日露戦争前後までの明治期ですが、主人公は 伊藤博文(2018年1月28日のブログ) です。
融和的な対ロシア外交を進め、その背後には明治天皇が控え、皇室外交を通じてロシアとの友好を深めていきました。
日露戦争の後、日露協約が締結され、日露は同盟国になりました。
伊藤の暗殺後、大きな役割を果たしたのは、後藤新平(2018年7月1日のブログ)でした。
満鉄総裁として、ロシアとの提携を進めるとともに、1928年1月、モスクワでスターリンと会談したことは、本書で初めて知りました。
満州事変から日ソ中立条約までの時代の中心人物は、松岡洋右です。
この頃からの政府の対応は、読むのが苦痛になるほど一貫性を欠き、松岡をはじめとする要路にあった人々の対応はあまりに無責任でした。
戦局は悪化し、破局を目前にした東郷茂徳などの重臣たちは、ソ連の和平仲介に一縷の望みを託すのですが、その結果は悲劇的でした。
これから未来志向でロシアとの連携協力を進める上でも、過去の日露関係を頭に入れておくことは重要だと感じます。