朝日新聞に掲載されていた、宮下奈都さんのエッセイを読みました。(朝日新聞 2017年9月30日)
宮下奈都さんの小説『羊と鋼の森』については、以前 2016年6月4日のブログ で書きました。
その繊細な感覚を思い起こさせる、しみじみとしたエッセイでした。
題して、「カラメルの秋」。
プリンの底に敷くカラメルの味が苦いのは嫌だ、という子どもさんのために、細心の注意を払ってきたのに、うっかりカラメルを焦がしてしまった、という体験について記されていました。
宮下さんは、もともと嗅覚には自信があり、「幼い頃から、家族の誰にもわからないような匂いを当てた」そうです。
この繊細な感覚は、『羊と鋼の森』にも表現されています。
「鼻がいいことが私のひそかな自慢だった」宮下さんは、「がっかりし続けるわけにもいなかい」と思い直し、こう続けます。
「何かが衰えたとしても、それで不しあわせなわけではない。少しさびしいけれど、しかたがないなと思えたらいい。能力が衰えた分、きっと育っているものもあるはずなのだ」
とても、元気をいただきました。
私も、ありとあらゆる能力が減退しているのを感じながら、それでも、何とか踏ん張れているのは、自分の中に、「きっと育っているもの」があるからなのだと気づきました。
家族や周囲のみなさんからの励ましのお蔭で、自分の中に何か新しいものが芽生え、息吹き、育っているのでしょう。
「カラメルの秋」
タイトルも素敵ですね。
私も、宮下さんと同じ想いで、「高い空にちぎれた白い雲」を見上げました。
秋が深まりゆく神戸。
元気いっぱい、明日も踏ん張ります。