フィリピンのドゥテルテ大統領の言動に注目が集まっています。
ドゥテルテ氏が大統領に就任したのは、フィリピン憲法大統領の再選を禁止しており、アキノ前大統領が立候補できなかったことが大きな要因として挙げられます。
憲法で大統領の再選を禁止している国は、ほかに韓国、ペルーなどです。
ここで思い出されるのは、かつて総務省に設置された「首長の多選問題に関する調査研究会」での議論です。
菅義偉総務大臣(当時)の指示により設置されたこの研究会の報告書(2007年5月)は、地方自治体の長の多選制限を法律で制限することは立法政策の問題であり、必ずしも憲法には違反しないとする一方、再選を禁止することは、憲法上問題があるとの見解を示しました。
再選を禁止すると、その地方自治体の長にとって、引き続き選挙される機会が与えら れず、また、選挙人にとっても1期目の実績を評価する機会が与えられないことになります。
これは、結果として、「選挙権・被選挙権の双方について著しい制約」になると考えられました。
憲法は再選禁止について何の規定も置いていませんから、再選禁止が憲法上問題があるという考え方は、代表民主制に関する、より根本的な原理から導き出されるのと考えられ、理論的には普遍的な妥当性を持ちます。
一方、各国の制度は、一般理論のみでなく、それぞれの苦難に満ちた民主主義確立の歴史を経て出来上がっていることにも留意する必要があります。
このように、行政権の長の再選禁止については、多角的に考察する必要がありそうです。