久元 喜造ブログ

若手のみなさん、本を読んで下さい。

今年入庁されたみなさんをはじめ若手のみなさんには、仕事の合間を縫って、できるだけ本を読んでもらいたいと思います。
私がブログで取り上げている本は、自分が好きで読んでいるだけですし、趣味が偏っていますから、あまりお薦めはしません。
新聞の書評欄は、各紙とも充実しており、それらの中で気に入った本を読むのもいいと思います。

私は、いわゆるハウツー本を読むことはほとんどありません。
小説やドキュメンタリー、政治・社会、歴史、音楽に関する本が多いです。
すぐれた小説を読むことは、感性を磨き、視野を広げ、想像力を飛翔させるのに役立ちます。
松本清張が残した一連の著作は、ストーリーの面白さとともに、戦後社会の断面、とりわけ矛盾に鋭く切り込んでいます。
よくテレビで放映されますが、原作の価値も香りもほとんど失われています。

吉村昭の著作も、そんなにたくさん読んだわけではありませんが、いずれも優れています。
私が一番好きな小説は、『破船』。
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辺境の地で起きる惨劇の物語です。
過酷な環境の中に生きる人々の逞しさと非道、突然襲いかかる危機、人々の混乱ぶりと苦しみ、村おさの決断などが生き生きと描かれています。
豊かで平和な世界に生きる私たちも、そこから何かを学び取ることができるでしょう。

私はホームで電車を待っているときなど、『破船』の中の一シーンが浮かんでくることがあります。
映画化された作品を見たわけでもないのに、不思議です。
それだけ強烈な印象が刻まれたということかもしれません。(文中敬称略)