デュッセルドルフ大学トーマス・ポグントケ教授(比較政治学専攻)をはじめとする、18人の研究者の共同執筆です。
500頁を超す大著で、少しずつ読み進め、ようやく読了しました。
中央政府が議院内閣制、地方自治体がすべて大統領制をとっている国は、主要国では日本だけです。
この特異とも言える統治構造が、果たして持続可能であるのかどうかは、以前から、関心の対象であり続けてきました。
本書の答えは、おそらくイエスです。
本書は、主要な民主主義国家について、執政府、政党、選挙の三つの側面で分析を加え、大統領制化が進んでいることを活写します。
大統領制化の原因として挙げられるのは、伝統的な社会的亀裂政治の衰退、マスコミュニケーション構造の変化、政治的決定過程の国際化、国家の肥大化などです。
そのような背景の下に、議院内閣制、大統領制、半大統領制、首相が直接公選される議院内閣制(一時期のイスラエル)という政治形態の相異にもかかわらず、今日、大半の国で大統領制化が全面的に進行している、というのが本書の結論です。
各国における執政府内の資源配分、執政府と政党の力関係、政党間の関係におけるリーダーの役割、選挙における政党とリーダーの役割など、動態的な視点に立った分析は、静態的な制度間比較を超えた説得力を持ち、たいへん興味深かったです。
我が国の地方自治体は、大統領制をとっており、地方自治制度においても、選挙制度においても、政党は登場しませんが、実際には、議院内閣制的要素が制度と慣行の両面で存在しています。
いろいろな要因が絡み合い、我が国の統治構造は、奇妙な安定感を獲得できているかもしれない、というのが、本書の素朴な読後感でした。