久元 喜造ブログ

陳舜臣『神戸 わがふるさと』

shunshin
去る5月26日に陳舜臣先生(1924 – 2015)のお別れ会が開催され、このときに頂戴しました。
特別限定版です。
3部構成になっていて、第1部には、震災前に執筆されたエッセイが、「第2部 ノベルズ」には、神戸を舞台にした小説が、第3部には、震災後に執筆されたエッセイが収められています。

9編の小説からは、いずれもそのときどきの神戸の情景や雰囲気が立ちのぼってきました。
とりわけ、路地裏の廃墟を舞台にした『半月組』は、私には昭和30年代の新開地の路地裏を想起させます。
だいぶ少なくなっていましたが、空襲で廃墟になった建物がまだ残っていました。

第3部のエッセイは、震災の翌日、神戸新聞の一面に掲載された有名なエッセイ『神戸よ』で始まります。

「・・・神戸市民の皆様、神戸は亡びない。新しい神戸は、一部の人が夢見た神戸ではないかもしれない。しかし、もっとかがやかしいまちであるはずだ。人間らしい、あたたかみのあるまち。自然が溢れ、ゆっくり流れおりる美わしの神戸よ。そんな神戸を、私たちは胸に抱きしめる」

この一節を、私たちは、忘れることがあってはならないと思います。