久元 喜造ブログ

「昭和天皇実録」の謎を解く

本当は、『実録』そのものを購入し、読み進めるのが本来の姿なのでしょうが、なかなかそこまで時間がとれそうにもないので、安直であることを自覚しつつ、解説書で、昭和天皇の実像に近づきたいと思いました。
半藤一利、保阪正康、御厨貴、磯田道史の各氏による座談です。(文春新書)
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ご幼年期の記述は興味深い内容を含んでいましたが、やはり、夢中になって読んだのは、政党政治の終焉と戦時体制への移行、日中戦争から日米開戦、戦争遂行と終戦に至る時代の記述です。
この困難な歴史過程の中で、昭和天皇がどのような行動を取り、どのような言葉を残されたのか、また、それらから推察される昭和天皇の心象風景の一端に触れることが出来ました。

昭和初期の記述では、治安維持法「改正」について、昭和天皇が懸念を示され、十分審議を尽くすよう指示されていたことは、これまで知られていなかったようです。
また、昭和天皇が美濃部達吉博士の「天皇機関説」に賛同されていたことは、今回の『実録』で史実として確定したと言えます。

それにしても、日米開戦に至る過程で、陸海軍のトップ、杉山元参謀総長、永野修身軍令部総長が、いかに根拠のない、無責任な上奏を繰り返していたかが、よくわかりました。
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以前読んだ、 古川隆久『昭和天皇 「理性の君主」の孤独』 (中公新書)の読後感と共通しますが、昭和天皇の深い苦悩と孤独感に改めて想いを馳せることが出来ました。