久元 喜造ブログ

組織いじりは、ほどほどに。

国と地方で長く行政に携わってきましたが、新しくトップに立った方は、自分が力を入れたい分野を担当する組織を新たにつくろうとする傾向があるように見受けられます。
選挙で自分が有権者のみなさんに約束した公約を実現するためには、そのための態勢が必要であることは理解できます。

しかし、相当規模の職員集団を必要とする仕事がいまだないにもかかわらず、新しい局や部、あるいは課を新設するのは考え物です。
というのは、国であれ、地方自治体であれ、はるか以前から行政改革が求められ、全体の組織や職員数を増やすことができない中で、新しい組織をつくれば、すでにある組織、局、部など廃止したり、縮小する必要があるからです。
トップがやりたい仕事をやる組織をつくり、一方で、現実の仕事と格闘している職場の職員や組織を減らすのは、現実の仕事に支障がでかねないし、行政サービスの水準を低下するおそれがあり、また、職員の士気にも影響しかねません。

トップが新しい政策を掲げ、実現しようとするときには、企画部門、あるいは、その政策分野に関連が深い局などの政策担当セクションにおいて、政策の具体化を図ることから始めるべきだと思います。
そして、政策が具体化したら、既存の組織をうまく活用しながら、必要に応じて、その組織の拡充を含めて体制を整備し、その実施を図るべきだと思います。

そもそも、自ら掲げた政策の実現を、「こういう組織を新設しました」といってアピールすることは、邪道であり、本末転倒です。
国民や住民は、選挙で約束した政策がどのように実現されるのかに関心があるのであって、役所の組織がどうなるのかは、関係がないことです。

それに、組織の改編はコストがかかり、市民や職員にも負担をかけることを忘れてはなりません。
役所の組織を表示する標識、案内板、プレートのほか、役所の文書など、すべての表示を変えなければなりませんし、徹底するのにとても手間暇がかかります。

下の看板では、「生活文化観光局」の名前が見えますが、この局は、平成18年に廃止になっています。

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この看板があるのは、市役所の真向いのフラワーロード沿いです。
市役所のすぐ目と鼻の先でも、こんなありさまです。
組織いじりは、ほどほどにすべきではないでしょうか。