秋深まりゆく頃になると、中三のときのことを想い出します。
いよいよ高校受験に本腰を入れようとしていた矢先、母が突然ベーチェット病と診断され(後年違うことがわかりましたが)、神戸大学附属病院に入院してしまったのです。
このときから、私の生活は一変しました。
中学は神戸電鉄の箕谷にあり、自宅は鈴蘭台駅から歩いて15分ほどのところでした。
いったん家に帰ってカバンをおろし、駅にとって返して湊川に出て、附属病院まで歩き、母を見舞い、また湊川に戻って、東山商店街やダイエーで食材を買い、家に帰って、父と弟の分も含めて夕食をつくる ― 週に2、3日がそんな日々になりました。
母を見舞う時間がなく、買い物だけして帰ることもありました。
少しでも安い食材を買おうと、商店街をウロウロしましたが、物心ついた時から見知った界隈をひとりで歩くのは、むしろほっとする時間でした。
歳月が流れ、先日、あるパーティーで、女性の方から、こう話しかけられたのです。
「失礼ですが、お母様は、神戸大学の附属病院に入院しておられませんでしたか?」
当時のことをお話していると、間違いなく、母でした。
その方は、当時、看護学生として研修を受けられていたそうです。
私は、大変驚きながらも、
「母は突然、難病を告げられ、私の受験のこともあって、心理的に不安定だったと思います。ご迷惑をおかけしました」
と感謝とお詫びを申し上げたところ、その方は、
「そんなことはありません。お母様は、とても難しい病状だったにもかかわらず、息子のためにも必ずよくなると確信をもっておられました。むしろ元気をいただいたのは、私の方です」
とおっしゃていただき、感謝の気持ちがあふれました。
47年前の病室の光景などがよみがえってきました。