久元 喜造ブログ

タカハシノブオ展

神戸市灘区の BBプラザ美術館 で、9月23日から11月24日まで「タカハシノブオ」展が開催されています。先日、お邪魔し、鑑賞しました。
「あるがままに生きた画家」「叫ぶ原色・ものがたる黒」というサブタイトルが付けられています。
takahashi

高橋信夫(1914-94)は、戦後の神戸で活動した、たいへん個性的な画家です。
徳島県鳴門市の生まれ。神戸で絵を学びます。中国などに出征し、神戸に戻ってきますが、妻が亡くなり、貧困の中で娘さんとも生き別れになります。
新開地のアパートに住み、港湾労働者として働きながら、創作活動を行いました。酒浸りの日々の中で、次々に作品が生まれていきました。
BBプラザ顧問の坂上義太郎さんによれば、「酒を必要とする時は、拾った板切れや洋服箱、あり合わせの厚紙などに描いて売った」そうです。
「描いては売り、売ってはまた描く。けれどそうして手にした金は、すぐに酒へ化けてしまった」・・・

展示されていた作品の題材は、神戸の街の風景、皿に盛られた魚、日々接していた女性、花などですが、私にはとりわけ、新開地など神戸の夜の街を描いた作品が印象的でした。
黒を基調にして、さまざまなネオンサインの文字が多彩に描きこまれています。確かに荒々しいタッチなのですが、たいへん完成度の高い作品のように感じられました。
私には、評価が確立している「大家」の域を突き抜けた、最高峰の作品群であるように思われました。単なる素人の感想に過ぎませんが・・・

ひととおり鑑賞した後、もういちど、夜の街を描いた作品群を見ていますと、かつて新開地近辺にあった、喫茶「名の無い茶房」「一休」、劇場「国際ミュージック」、クラブ(?)「曲線」「大$」、バー「オアシス」といった名前と光景が甦ってきました。
とても不思議な時間でした。(敬称略)