久元 喜造ブログ

自治体単独での複式簿記の導入は無意味。

街頭活動も3日目に入り、これまで経験したことがない日々が始まりました。
帰宅して、ふと、われに帰ると、実務的感覚が戻ってくるものですから、10月1日のブログ に続いて、財務会計制度について、続けたいと思います。
 9月29日のブログ にも書いてきましたように、複式簿記・発生主義による財務会計制度は、国による統一的な制度改革により導入されるべきです。
そうでなければ、自治体間の財政状況の比較はできません。

ところが、極めて少数ながら、複式簿記・発生主義に財務会計システムを導入する動きがあります。
東京都と大阪府がすでに導入済みで、愛知県がこれらを手本にしながら導入に向けて作業をしています。市レベルでは、町田市が導入済みで、大阪市が近々導入すると聞いています。

私は、総務省自治行政局長のとき、東京都にお邪魔して、日々作業されている方の画面を見せていただき、全体的な説明も聞かせていただきました。しかし、何のためにこんなことをやっているのか、まったく理解できませんでした。
東京都では、通常の財務システムの改修に合わせて、複式簿記の仕訳もできるシステムに全面的に改修を行ったとのことで、職員は、マニュアルどおり淡々と作業をされていました。
しかし、それぞれの局・部、課などで特にメリットとして実感できることはないようで、また、企業のように四半期ごと決算とりまとめを行ったりしているわけでもありません。もっとも、その必要性もないのでしょう。
また、東京都は、複式簿記の仕訳に基づいてセグメント情報(局別決算)を作成し、議会の審議に資する資料として提出しているとのことでした。
これは、単式簿記からも作成が可能です。
東京都の公式説明は、さらに、フローとストックを分ける複式簿記の考え方を全庁的に浸透させることによって、職員の意識を改革することを、効果の一つに挙げておられましたが、その浸透度は、それほど大きくはないようです。

愛知県は、今年度から、試行的に、全庁的に財務会計システムに複式簿記による仕訳を加味したシステムを動かしていると聞いています。
平成23年度、24年度の2年間でシステム改修を行い、全体で4億円から5億円かかったとのことでした。複式簿記による決算は、平成25年度からということですので、来年度公開される予定です。

私には、これらの自治体の取り組みは、壮大な無駄であるようにしか思えません。
神戸市に複式簿記を導入とすれば、やはり、億単位のお金が必要になることでしょう。
そんなお金があるなら、もっとほかに使い道はいくらでもあります。