久元 喜造ブログ

複式簿記・発生主義は、全国一律に導入を。

9月15日の討論会 で、神戸市への複式簿記の導入について、「非現実的な改革」の一例として挙げました。

私は、自治体の財務会計制度において、複式簿記・発生主義の導入を否定するものではありません。
むしろ、積極的に検討すべきだと思います。
そして、複式簿記・発生主義への移行は、財務会計制度における制度改正によって行うべきであり、全国一律の方式によって導入すべきだと考えています。
そうでなければ、複式簿記・発生主義で作成される財務書類によって、自治体間の財政状況を比較することはできません。

制度改正を待つことなく、単独で、複式簿記・発生主義による財務会計システムの導入に踏み切る自治体が、極めて少数ながらありますが、ほとんど無意味です。
導入のための経費はまったくの税金の無駄遣いです。また、そのための職員研修も、お金と時間の無駄と言えます。

民間企業において、複式簿記・発生主義による財務処理が行われているのは、法令あるいは会計慣行上、それが義務づけられているからです。
株式会社は、複式簿記・発生主義を特徴とする企業会計の方式により、会計帳簿や計算書類の作成が義務付けられています。また、上場企業は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書などにおいて、財務諸表の作成が義務付けられています。

これは、会社法では、株主及び債権者保護を目的として配当可能利益の算定を行うことが要請され、また、金融商品取引法では、投資家保護を目的として投資判断に必要な経営成績や財政状態を開示することが要請されているからです。そして、これらの要請に添った形で、財務情報が公開することが義務付けられているわけです。

つまり、利益の最大化を目的とする民間企業にとっては、四半期や一年といった一定期間内における企業活動の結果が「どれだけの利益を生んだか」という決算の情報が最も重要な情報だからです。

企業と地方自治体の存立目的は異なりますが、民間企業における財務情報のあり方は、地方自治体の財政状況を正確に開示する上で、大いに参考になると思います。
その理由については、明日のブログで触れたいと思います。