昨日のブログ に続き、複式簿記・発生主義について書きます。
きょうは、自治体の財務会計制度の改革が急がれる理由について、触れたいと思います。
自治体を巡る財政状況が厳しさを増す中、行政コストの見直しに加え、資産・債務の改革を進め、限られた経営資源を効率的・効果的に活用した経営を行うことが重要となっています。
しかし、単式簿記・現金主義による現行の官庁会計では、単年度の現金の流れを把握するにとどまるため、資産や負債などの「ストック情報」、減価償却費や引当金も含む正確な「コスト情報」が十分に把握しにくいという構造的な問題を抱えています。
この点で、複式簿記・発生主義による財務会計制度を導入すると、現金収支に関わらず、資産の移動や収益・費用の事実の発生に基づいて記録することになり、一つの取引について、原因と結果の両方からとらえ、二面的に記録していくことによって、資産の動きや損益を、より正確に把握することができるようになります。
民間企業で行われている会計処理と同様、日々の会計処理の段階から複式簿記・発生主義を導入し、貸借対照表、行政コスト計算書(損益計算書)、キャッシュ・フロー計算書などの財務諸表を作成することにより、自治体全体の財務状況を正確かつ迅速に把握することが可能となります。
このような方向での制度改革は、検討に値します。
総務省では、1999年(平成11年)頃から、研究会を設置し、検討が進められてきました。 これがいわゆる 公会計改革 の動きです。
そして、2006年(平成18年)8月には、事務次官通知の中で、各自治体に対し、「原則として国の作成基準に準拠し、発生主義の活用及び複式簿記の考え方の導入を図り、貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書の4表の整備などを行う」ことが要請されています。
発生主義に基づく財務諸表の作成を自治体に要請する以上、国は、その基準の明確化を行い、自治体の決算に関する制度を抜本的に改革すべきです。
そして、民間企業の財務諸表の作成が、法令と確定された会計慣行に基づいて、統一的に行われているように、自治体の決算書類についても、法令に基づく制度化が図られるべきだと考えます