久元 喜造ブログ

野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』


都市部では不動産価格が高騰し、住宅は入手困難になっています。
東京23区の2023年新築マンションの平均価格は、1億1,483万円になりました。
これでは、パワーカップルでも手が出ません。
マンションの高騰は、東京のみならず、大都市のほか中小都市でも見られます。
都心では新築マンションの価格高騰を背景に、中古マンションや新築・中古戸建住宅の価格も上昇しています。
著者は、その要因の一つに、市街地再開発事業の多用を挙げます。
市街地再開発事業では、保留床を多く生み出すために建物を「高く大きく」しがちで、地権者への補償や従前の老朽ビルの解体も加わり、全体事業費を押し上げます。
さらに、円安を背景に外資・外国人による不動産購入が旺盛になり、不動産投資・転売目的の購入が活発になっていることも要因として挙げられます。
価格の上昇が続く一方で、東京圏では供給数が減少しています。
もはや都市圏は都市化しきってしまい、マンション建設の適地が少なくなっているのです。

中古マンションの供給数は減っておらず、郊外でも旧耐震基準のマンションが”ビンテージマンション”などと称され、それなりの価格で売れています。
このように、住宅市場の中で、高額すぎて「手が出ない住宅」と、立地や古さなどから「手を出したくない住宅」が増えている一方、「手が出せる」「手を出したい」住宅の数が増えていないため、住宅の入手が困難になっているのです。
著者は、一般的な世帯に入手可能な「アフォーダブル住宅」の供給が不可欠と指摘します。
人口減少が続く中、将来の解体に困難が伴う集合住宅一辺倒ではなく、手頃な戸建て住宅の供給にも目を向ける必要がありそうです。