久元 喜造ブログ

2018年10月14日
から 久元喜造

増田俊也『北海タイムス物語』


かつて北海道に「北海タイムス」という新聞がありました。
部数では北海道新聞(道新)に遠く及ばないものの、札幌市議会の委員会の質疑を丹念に報道するなど地域に密着した新聞でした。

私が札幌市役所に勤務した1990年代前半、すでに経営は相当厳しいと言われていましたが、社員の士気は高いようでした。
女性記者のみなさんは、薄いタオル1枚で道内各地の露天風呂に入り、自らの入浴写真入りの紀行文を書きました。
「女性記者が行く 道内温泉紀行」のようなタイトルで出版され、札幌市財政局も30部購入しました。

この小説は、 大手新聞社の入社試験にことごとく失敗した主人公、野々村が北海タイムスに入社し、怒涛のような日々を送る中で成長していく物語です。
作者の増田俊也さんご自身の体験が反映されているようです。

記者希望の野々村が配属されたのは、整理部。
仕事は過酷、職場環境は最悪、しかも、給料は管理職を含め、道新や全国紙の何分の一という信じられない薄給でした。
先輩、上司はとにかく癖のある人たちで、未明になると、居酒屋の「金不二」「玉乃屋」(漢字が違いますが、懐かしいですね。〇〇横丁と呼ばれていました)に繰り出しては、つかみ合い寸前の喧嘩を繰り返すのでした。
そのような境遇の中で、彼らのすさまじい仕事ぶりを支えたのは、新聞を読者に届けることへの使命感、そして、北海タイムスに対する限りない愛情でした。

たまたまですが、9月6日の毎日新聞に、「北海タイムス廃刊」の記事が出ていました。
記事によれば、北海タイムスは、1998年9月2日の1面に「きょうで休刊します」の見出しを掲げ、読者に別れを告げたのでした。


2018年10月12日
から 久元喜造

伊藤博文公台座の周辺整備


大倉山公園に伊藤博文公の台座が残っています。
今年が明治維新・兵庫県政150周年に当たることから、台座周辺を整備することにしました。

現在の大倉山一帯は、もともと大倉財閥の創始者、大倉喜八郎が所有し、別荘としていました。
しかし、大倉喜八郎自身はあまり滞在せず、彼と懇意で、初代兵庫県知事を務めた伊藤博文公が気に入り、よく利用していました。
1909年(明治42年)、伊藤博文公がハルピンで暗殺されます。
この直後、大倉家から、この場所に伊藤博文公の銅像を建てて公園とし、市民に開放してほしいとの申し出があり、神戸市に寄付されました。

2年後の1911年(明治44年)10月、銅像が完成し、大倉山公園が開園しました。
銅像の伊藤博文公はフロックコートを着用し、高さは十尺(3.03m)ありました。
台座は、京都大学初代建築学科教授の武田五一の設計によるもので、デザインは、国会議事堂中央部分と類似しています。
武田五一の愛弟子である吉武東里らが、師匠のデザインを取り入れて国会議事堂を設計したともいわれています。

伊藤博文公の銅像本体は、第2次世界大戦中に金属供出され、台座だけが残りました。
以前は、下の写真にあるように、高さ2m程のネットフェンスで囲まれ、フェンスの上部には有刺鉄線が張り巡らされていて、全体として近づきにくい雰囲気でした。

今回の整備では、フェンスの高さを低めに抑え、樹木を間引きし、エントランス広場、スロープ型園路を整備しました。

また、銅像の写真を掲載した説明板も設置しました。

大倉山にお出かけの際には、ご覧いただければ幸いです。


2018年10月9日
から 久元喜造

神戸市から始まった「巡回産婆事業」


読売新聞(2018年10月3日)朝刊に、「乳児を死なせない 関東大震災後の知られざる奮闘」の見出しで、乳児死亡を減らすために百年前の人々が挑んだ格闘の軌跡が紹介されていました。
著者は、助産師・近代史研究家の 和田みき子 氏です。

和田氏によれば、現在、日本の乳児死亡率(出生1,000あたり)は、2.0程度ですが、100年前、大阪市では200を超えていました。
生まれた子供の5人に1人が、1歳になる前に亡くなっていたのです。

危機感を持ったのは、内務省衛生局でした。
衛生局長を経験し、自身医師でもあった 後藤新平 が内務大臣に就任すると(2018年7月18日のブログ)、1920年、保健衛生調査会から、産院の設置(巡回産婆、産婆養成機関、妊婦相談所の併設)、育児相談所の設置(牛乳供給所の併設)など15項目に及ぶ建議が提出されました。

この中の「巡回産婆事業」を初めて実施したのが、神戸市でした。
詳しく知りたいと思い、保健福祉局を通じて和田氏の論文(上の写真)も入手し、読みました。
同論文によれば、巡回産婆は「出産の際には、連絡があれば、すぐに産家に赴き、分娩一切の処置を行ない、また産後は1週間、産褥婦を回診し、産後処置をするとともに、男児には5日間、女児には6日間・・・沐浴して、乳児哺育の指導を」しました。
また、巡回産婆は、「1週間に一度、月曜日に市役所社会課に出頭して前週の報告をし、衛生材料等の補給を受け」たのだそうです。

全国に先駆けて乳児の命を守るために全力を尽くした先人の努力を思い起こし、その思いを受け継ぎながら、母子の健康を守る取り組みを進めたいと思います。


2018年10月7日
から 久元喜造

西村京太郎『神戸電鉄殺人事件』

もちろん、タイトルに惹かれて購入しました。
神戸電鉄はどんなふうに登場するのだろうと期待して読み始めました。
表紙には、見慣れた車両の写真もあります。

物語は、わがままな女優が新横浜での撮影現場に姿を見せず、行方不明になってところから始まります。
そして、彼女の死体が神戸・北野の異人館のプールで発見されところから、事件は展開し始めます。

次々に起きる殺人事件。
戦時中、カンボジアで特務機関が行った悪行、そして戦後どさくさに紛れて日本に運び込まれたらしい仏像が事件の焦点として浮かび上がってきます。
仏像のオークションが、有馬温泉「グランドありま」で開かれることになりました。
十津川警部は、新幹線で神戸に向かいます。
県警本部で打ち合わせした後、新神戸駅の地下に下り、北神急行に乗車。
「この路線が走る区間はほぼトンネルで、外の景色はほとんど見えない。谷上駅で、今度は神戸電鉄に乗り換えた。紅葉はまだ早かったが、車内は、観光客でにぎわっている」

殺人事件は、十津川警部が有馬に滞在中、神戸電鉄の車両の中でも起きます。
有馬温泉駅と有馬口を走る電車の中で死体が発見されました。
被害者二人は、終点の新開地駅までの切符を持っていました。
関東出身の二人は、一駅区間を行ったり来たりする電車があるとは思わず、眠り込んでしまいます。
犯人は車内で二人を刺し、次の駅に着いて逃げ、死体を乗せた電車は勝手に戻っていきました。

タイトルの割には、神戸電鉄が登場する部分はごくわずかです。
ダイヤについての仕掛けがあるわけでもありません。
ミステリーとして面白いかと言えば、意見が分かれるところでしょう。


2018年10月4日
から 久元喜造

ダイキン工業「ブリッジパーソン」は参考になります。

少し前のことになりますが、産経新聞(2018年9月24日)朝刊1面に、㈱ダイキン工業が「ブリッジパーソン」という専門職を設けるという記事が掲載されていました。
本社と子会社の間の「情報パイプ役」としての役割が期待されているのだそうです。

同社では、本社と子会社の間で、情報が「会社の上層部に伝わるまでに実態と異なったり、十分な内容が届かなかったりする問題も起きがち」だったと言います。
「ブリッジパーソン」は、「子会社側から得た情報をありのままの状態で引き上げる一方で、本社の経営戦略を正確に伝達。組織に横串を通して、社員が目指すビジネスの方向性を一致させていく役目を担う」とされています。

記事には、ダイキン工業幹部の「現場にある泥水のような情報が、本社に上がってくるときには真水に変わっていてはいけない」という話も紹介されています。
確かに、大きな組織になると、組織内部の意思疎通がうまくいかず、正確な情報が伝わりにくくなるという傾向が出てきます。

神戸市役所でもそのような傾向があることは否定できません。
ヤミ専従問題の発覚を受けて、神戸新聞社説(2018年9月24日)は、「危惧するのは、久元喜造市長が「就任以来、幹部から報告も聞いたことがない」としていることだ。・・・悪い情報も上がってくる体制になっていないのであれば、巨大組織・神戸市のガバナンスに疑問符が付きかねない。早急な点検が必要だ」と指摘しています。

そのとおりだと感じます。
「ブリッジパーソン」の試みを参考にしながら、新年度の組織改正では、組織をつなぐ仕掛けを取り入れることができないか、検討したいと思います。


2018年10月1日
から 久元喜造

頑張る職員が報われる市役所に。


台風24号は、昨夜8時ころ和歌山県田辺市付近に上陸し、神戸市内でも暴風雨が吹き荒れました。
9月4日の台風21号で大きな被害を受けた神戸市では、防潮鉄扉を閉じるなど厳戒態勢で臨みました。
危機管理室を司令塔に、多くの職員が徹夜で情報収集、避難指示・勧告、119通報への対応、避難所の開設と運営などの応急対策に当たりました。
幸い、台風24号による大きな被害は、今のところ出ていません。
市民のみなさんの冷静で落ち着いた対応に感謝申し上げます。

多くの神戸市職員が、市民の生命、財産を守るために献身的に仕事をしているにもかかわらず、神戸市役所に対しては、いま厳しい批判が寄せられています。
組合幹部が仕事をせずに、違法に組合活動に従事する慣行、いわゆる「ヤミ専従」に向けられる厳しい視線です。
また、法律上認められた期間を超えて在籍専従を認め、超過期間を退職手当の対象に含めて、違法に退職手当を上乗せして支給していた実態も判明しました。
このような違法行為は、組合だけで行えるものではなく、人事当局が関与していたことは確実です。
誠に遺憾と言わざるを得ません。

大事なことは、まずは事実を明らかにすることです。
歪んだ労使関係は数十年続いてきた可能性があり、いまの行財政局職員をバッシングしてみても問題解決にはつながりません。
それぞれの事案に応じ、第三者委員会の調査に委ね、あるいは内部調査を進め、真相を明らかにしていきます。
市民の代表である市会からの質問や指摘に誠実に答えていくことも大切です。
旧来の悪弊を改め、真に頑張る職員が報われる市役所にしていかなければなりません。


2018年9月28日
から 久元喜造

日本は次世代へのツケ回し大国だ。


プレジデント」(2018年9月3日号)に、池上彰さんとジャック・アタリさんの対談があり、興味深く読みました。
その中で、アタリさんが創設した財団「ポジティブプラネット」による調査が紹介されていました。
OECD(経済協力開発機構)に加盟する34カ国が、国民に対してどのような将来を準備するキャパシティを有しているか(国家のポジティブ指数)を測る調査です。
毎年公表されている統計値を基に、29項目の指標により比較しています。
2017年の結果は、1位がノルウェー、2位がアイスランド、3位がスウェーデン、以下、デンマーク、ニュージーランド・・・と続きます。
これらの国は、最もライフクオリティが高く、国民に明るい将来を準備できているとされます。

最下位は、ギリシアで、ハンガリー、トルコ、メキシコと続き、下から5番目が日本。
日本は、34カ国中、30位でした。
「人口の減少、公的債務の多さ、女性の地位の低さなどがメインの理由です」とアタリさん。
今の世代が、減り続ける将来世代にツケをずっと回しているということです。

神戸市の経常的経費を見ても、年間の行政コスト 6188億円のうち、812億円が、赤字地方債などにより将来世代の負担に回されています。(平成28年度決算)
日本のすべての自治体がこのような状況になっているのです。
社会の持続性を確保するためには、社会保障経費について抑制を図るとともに、給付と負担のアンバランスを見直していくことが必要です。
子どもたちが大人になったときに背負う負担を少しでも減らしていくために。
そしてこれから生まれてくる将来世代のためにも。


2018年9月25日
から 久元喜造

鈴蘭台駅前開発が完成


神戸電鉄・鈴蘭台駅前開発が完成し、今朝、記念式典が行われました。
来年度には、駅前広場が完成し、最終的には、上のイメージ図のような鈴蘭台駅前になります。

式典では、私から、一緒に事業を進めてきた寺田信彦社長をはじめ神戸電鉄、この大きなプロジェクトに終始理解を示し、協力をしてくださいました地域のみなさんをはじめ関係各位に感謝を申し述べました。
子どもたちも参加し、テープカットです。

完成した駅ビルの1階から3階までは商業施設となり、4階から7階まで北区役所が入ります。
再開発ビルは、3階で神戸電鉄・鈴蘭台駅と直結しています。
改札口は、天井から自然光を取り入れ、明るい雰囲気です。
エスカレーターなども整備され、改札口から街への移動もすごく便利になりました。
見違えるような変わりようです。
神戸電鉄とバスとの乗り継ぎを分かりやすく表示する工夫もしていきたいと考えています。

北区役所も面目を一新します。
待合スペースの拡張、引っ越しなどの手続きをワンストップで取扱う総合窓口の設置、わかりやすい窓口のカウンター、ユニバーサルデザインなどにより、新しい北区にふさわしい区役所になりました。

お子さま連れのお母さんにも安心して滞在していただけるよう、キッズスペースも設けています。

来年度中に完成する駅前広場も、ゆったりと、そして鈴蘭台らしさを感じていただけるように整備していきます。
駅前広場には、交番も移転し、便利で快適な鈴蘭台駅前が出現します。
鈴蘭台らしさって何だろう。
自分なりのアイデアもお話ししました。
みんなで考え、魅力あふれる街づくりを行っていきましょう!!!


2018年9月22日
から 久元喜造

真野俊樹『医療危機ー高齢社会とイノベーション』


帯には、「国民皆保険と財政規律を両立させるために」とあります。
世界に誇る日本の皆保険制度を持続可能なものとするためには、増え続ける国民医療費を抑制していくことが不可欠です。

本書では、各国の取組みが紹介されますが、とりわけ参考になるのは米国だと思います。
私自身、米国は満足な公的医療保険制度を持たず、医療サービスの分野では遅れているというイメージを抱いていましたが、本書を読んでそれが先入観であったと思い知らされました。
イノベーションを取り入れた医療サービスが、米国で次々に展開されていることが紹介されます。

たとえば、ACO(Accountable Care Organization)は、政府管轄の公的医療保険であるメディケアの患者を対象として、地域の病院と開業医・専門医が一つの診療母体を形成し、外来初診から入院、退院後のフォローアップまで継続的にケアを提供する概念です。
診療母体は、電子カルテなどを共有するとともに、さまざまな指標を通じて医療の質を管理し、質の向上に努めます。
特別に用意された支払プログラムでは、出来高払いではなく、「予想されるコスト」が前払いされ、コストの抑制と質を改善を図るためのインセンティブが用意されています。
このほか、リテールクリニックにおけるナースプラクティショナーの活用、CCRC(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)、IHN(広域医療圏の医療統合体)などの取組も注目されます。

筆者は、米国をはじめとした各国の事例を紹介した上で、医師のみならず患者自身のイノベーションも不可欠だと主張します。
これらの提言にはかなり実現可能性が高いものが含まれていると感じました。


2018年9月19日
から 久元喜造

ネットモニターのみなさんとの対話


神戸市には、市政に対するご意見をメールでスピーディーにお聴きするため、「神戸市ネットモニター」制度があります。
18歳以上の神戸市民に委嘱しており、9月1日現在、5,603人のみなさんが、ネットモニターとして活動されています。

ネットモニターのみなさんには、毎月1~2回程度、神戸市の施策に関するアンケートをお願いしています。
たとえば、7月には、広報紙KOBEについてお聞きしたところ、約7割の方が「毎号読んでいる」と、また、今年5月に紙面を左開きに変更し、記事の文章を横書きに統一したことについて、約8割の方が「適切である」と回答されました。
アンケートの結果は、施策の立案、改善につなげていきます。

不定期ですが、ネットモニターのみなさんとは、「対話フォーラム」を行っています。
これまでは、土日に開催していましたが、お勤め帰りに気軽に参加していただけるよう、先日は、午後6時から三宮で開催しました。
約30名のみなさんが参加してくださいました。
ネットフォーラムでは、とくに毎回のテーマを決めることはしていません。
私から15分か20分、財政状況など市政の現状について簡単に紹介し、あとは、1時間あまり自由に発言していだくようにしています。
事前に発言内容もお聞きしていませんので、的確にお答えできないこともあると思いますが、 率直に議論することが大事だと考えています。

この日も、私の知らないことをずいぶん教えていただきました。
意見が分かれるテーマや、実現するまでに時間がかかるものもありますが、いただいたご意見は、できる限り、市政に反映させていきたいと考えています。