改めて興味深く再読しました。
「神戸散歩」の次に「横浜散歩」が収められていて、首都、すなわち国家権力に近い横浜との比較、二大港都の対比も面白かったです。
もちろん「神戸散歩」には、大阪、京都との比較も随所に出てきます。
たとえば、「二十年ばかり前、京都は人を緊張させるところがあるが、神戸はそうではなく、開放的で、他人(ひと)のことにかまわず、空気まで淡くブルーがかっていて、疲れたとき歩くのにちょうどいい、と感じたことがある」という一節など。
司馬遼太郎は、自らの街を愛してやまない神戸人を微笑ましく眺めながら、丹念に取材し、街を歩き、透徹した目で私たちの街について思索を巡らし、不朽の神戸論を書き上げたのでした。
「神戸散歩」が週刊朝日に連載されたのは、1982年秋のことだったようです。
「ポートピア81」が華やかに開催された翌年で、その後神戸の街は、震災の影響もあり、大きく変貌していきました。
しかし本書で取り上げられている、布引の滝、外国人墓地など古くからの佇まいを残している場所は今日なおたくさんあります。
改めてそれらの価値を再認識し、将来の世代に引き継いでいく責務を感じています。
来年の兵庫県設置150年を控え、明治維新当時の神戸に関する記述もたいへん勉強になりました。
司馬遼太郎は、「神戸の誕生が、革命の内戦前夜であったことは、都市性格の形成にとって重要な因子であったといっていい」とも記しています。(敬称略)