五百旗頭真先生は、「日本列島の地震活動は活性期に入った」との認識の下、関東、阪神・淡路、東日本の三つの大震災のあとをたどり、日本社会の地震に対する歴史性とその問題を明らかにすることを試みられました。
関東大震災については、被害の惨状とともに、当時の政府をはじめとする行政機関の対応について、詳しく触れられています。
とりわけ、「自警団」による虐殺の実相と背景はどのようなものだったのか、後藤新平による復興構想は、政争にどのように翻弄され、何を東京に残したのかについての記述は興味深いものがありました。
阪神・淡路大震災については、改めて、先生ご自身の経験を織り交ぜながら、当時の状況が活写されています。
また、東日本大震災の章では、とりわけ福島第一原発の事故に当たり、献身的な現場力によって救われたことが、改めてよく理解できました。
「それにしても、大災害の時代はなぜかくも私に寄り添うのか」
と、五百旗頭真先生は、あとがきの中で記しておられます。
先生は、阪神・淡路大震災でご自宅は全壊となり、かけがえのないゼミの学生を失われました。
東日本大震災では、政府に請われて、復興構想会議の議長に就任され、指導的な役割を果たされました。
そして、熊本県立大学の理事長に就任されてしばらくして、熊本は今回の地震に見舞われたのです。
ご自身のご経験を踏まえて執筆された本書の筆致は力強く、熱い想いがひしひしと伝わってきました。