久元 喜造ブログ

デトロイトの債務調整計画

日経新聞「経済教室」(2015年1月26日)に、「デトロイト市再建計画の教訓」と題する論文が掲載されていました。
執筆者は、小西砂千夫氏(関西学院大学教授)と犬丸淳氏(自治体国際協会ニューヨーク事務所上席調査役)です。

2013年7月23日のブログ 同年10月17日のブログ でも取り上げましたが、かつて自動車王国の名声をほしいままにしたデトロイト市の破産(2013年7月18日)は、内外に大きな衝撃を与えました。

米国自治体の破産では、債務の削減、すなわち債権放棄が行われるのが普通です。
小西・犬丸論文によれば、今回の事案では、債券の元金カットの大半は、債務保証をしていた地方債保証会社が蒙ったようです。デトロイト市の財政悪化は相当前から周知の事実であり、「それを承知で債務保証した地方債保証会社に厳しい結果となるのは妥当」です。
一方、職員も痛みを甘受しなければなりません。
退職職員の年金債務のカットは40%にとどまりましたが、退職者医療保険債務は90%がカットされることになりました。

我が国においては、自治体が財政危機に陥っても債務の調整はなされず、自治体は、金利も含めて全額を返済しなければなりません。
このため、小西・犬丸論文が指摘するように、返済が可能な範囲で財政悪化を食い止める必要があります。
制度としては、自治体健全化法が、共通の財政指標による財政状況の公表を自治体に義務づけ、指標が一定以上悪化すると、段階に応じて健全化への措置が発動されます。
これはこれで合理的な制度だと思います。

我が国では、財政健全化のための計画作成・承認にはほとんどコストがかかりませんが、信じられないことに、デトロイトでは1.8億ドルもの弁護士費用などの経費が発生したそうです。