久元 喜造ブログ

福田直子『デジタル・ポピュリズム』


サブタイトルは、「操作される世論と民主主義」。
帯には、「捏造され 誘導され 分断される現代」。
ともに本書の内容が端的に表現されています。

「第1章 ビッグデータは監視し、予測し、差別する」は、想像どおりの表題ですが、アクシオム社、データロジックス社、エプシロン社といったデータブローカーが米国で急成長していること、そして今や、MBA(経営学修士)よりもデータサイエンティストが花形職業となり、引く手あまたとなっていることを初めて知りました。
米国のように政治資金規正が緩い国では、集金力のある陣営が彼らを駆使し、有利にネット選挙を展開できることが容易に想像できます。

そして第2章では、まさにそのような「心理分析」データを使った選挙戦術が生々しく報告されます。
すでに2012年の大統領選挙では、陣営に情報を送った有権者に「クッキー」が送られ、購読雑誌、所有している車、フェイスブックへの「いいね!」の傾向などの情報が分析されて、関心分野に沿ったメールが送られていたと言います。

2016年の大統領選挙では、さらにこれが進化します。
地理的、統計学的な情報を5000のデータポイントで分析して米国人を32種類のパーソナリティーに分け、それぞれの属性にふさわしいマイクロターゲット広告が用意されました。
しかもそれらは、激戦区の有権者に集中的に送られたのだそうです。

このほか、偽ニュースの作られ方、急速に進む「ネットバブル」現象、ボットによるツイッターへの書き込みと拡散、売買される「いいね!」ボタンなど、想像を超えるネット世界の現実に戦慄を覚えるばかりでした。
この現実に、どう対応すればよいのか・・・