久元 喜造ブログ

牧原出『「安倍一強」の謎』

160724
東京におりましたとき、地方自治制度の企画立案などでご指導をいただきました、牧原出東大教授が近著を送ってくださいました。
題して『安倍一強の謎

「謎」に対する答えは、すでに「はじめに」の中に要約されています。
「与党から野党に転落して再度、与党になった自民党が、政権交代のサイクルを回し始めている」。
牧原先生は、自民党しかないという国民の「空気」が安倍政権の強さを支えているという見方を否定します。
そうではなく、政権交代を経た上での「強さ」なのだと。

そして、自民党は政権交代を経て、どのようにして強くなったのかについて、以下の目次に沿い、具体的に解き明かしていきます。

序章   国民の信頼は一瞬にして失われる
第1章  政権交代で何が変わったか?
第2章  菅義偉官房長官仕様の「官邸」
第3章  安保法制という混迷の政策転換
第4章  政権の性格を変えた2014年総選挙
第5章  安倍首相の言葉と野党党首の言葉
終章   野党が政権を奪い返す条件

本書で繰り返し出てくる二大政党間の「政権交代」という政治のありようは、牧原先生ご自身が間近で観察された英国の政治体制がモデルになっていると思われます。
その英国では、伝統的な二大政党制が大きく揺らぎ、政治的混乱が続いています。
英国を含む欧州各国の政治体制は、不安定化の方向に向かっているように見えます。
この混乱を対岸の火事として、我が国の政治が、本書が指し示すような成熟した「政権交代」のサイクルに入っていけるのかどうかが、これから問われるのかもしれません。