その時決めていた。全国初のコロナ重症者専用臨時病棟の建設

今から振り返れば、はじめて新型コロナウイルス感染症が広がって怒涛のような日々が続き、それが少し落ち着いた5月、感染者がゼロの日が続いた時期がありました。関係者の間にはほんの少し安堵の色が広がりました。しかし、神戸市役所の中では、感染は必ず再来する、そのときに備えなければならないという意見が大勢でした。過去の歴史に、100年余りの「スペイン風邪」も3つの波を伴って襲来し、感染の拡大と収束を繰り返したからです。

そんな時期の5月21日、健康局から、中央市民病院の通常医療の再開を準備する中で、病院内でプレハブの重症病棟を整備する案が検討されているとの報告を受けました。第1波のさ中、中央市民病院は、感染者の受け入れ、治療に全力で当たっていました。万全の態勢で臨みましたが、患者が急激に増加し、たちまち感染症病床は満杯となりました。そして、4月9日には院内感染が発生。懸命の努力にも関わらず院内に広がっていきました。通常の医療のみならず救急医療も制限しなければならない事態となりました。医療従事者のみなさんの必死の取り組みにより、何とか医療崩壊を防ぐことができました。

全国で初めてのコロナ重症者専用臨時病棟

このような状況に立ち入ったという現実、そして過去の経験に照らせば、中央市民病院の提案に基づき、臨時の重症者専用病棟を建設することは、極めて適切な方策であると確信しました。院内感染の経験に照らせば、コロナの重症患者には専用の病棟を用意し、患者動線や対応する医療スタッフを完全に分離し、専門チームが治療にあたることが必要なのではないかと考えられたからです。国内ではこれまで例がない病棟の構想でした。

6月2日、中央市民病院の木原康樹院長と臨時記者会見を行い、重症者専用病棟36床を整備する方針を発表しました。そして、整備のための予算、約11億円の事業費を令和2年6月議会に提案し、可決されました。臨時専用病棟の設備やシステムは、中央市民病院にお任せしました。医療現場で格闘しておられる医療従事者の声を反映し、もっとも使いやすい設備とすることが何よりも大事だと考えたからです。病棟には、人工呼吸器を全床に配備するほか、血液浄化装置、人工肺装置(ECMO)、遠隔モニタリングシステムを設置するなど、万全の体制を整えました。

全国で初めてのコロナ重症者専用臨時病棟

病棟の建設は急ピッチで進められ、11月9日から運用開始となったちょうどこのころ、神戸も第3波の感染に見舞われていました。コロナ重症者専用臨時病棟の運用は、何とか第3波に間に合ったのです。もしこの病棟の建設をしなかったらどんなことになったのか、今でも背筋がぞっとします。中央市民病院と神戸市健康局のみなさんの緊密な連携によって、全国で初めての試みが実現し、多くの感染者の治療が行われました。

全国で初めてのコロナ重症者専用臨時病棟
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