「待機児童ゼロ」-どう達成したのか?
2022年(令和4年)4月の神戸市の待機児童は、ゼロとなりました。近年最も多かったのが平成24年の531人でしたので、大幅に減少しました。
「待機児童ゼロ」は、すべての自治体にとって最も重要な目標です。自治体によっては、無理に数字合わせをして「待機児童ゼロ」を宣言したものの、その後また増加したケース、また逆に、高い水準の待機児童数を逆手に取り、「これだけ待機児童が増えるのは人気がある証拠」と、開き直る向きもあります。
大事なことは、無意味な宣伝に終始するのではなく、質が高い保育サービスをすべての子育て世帯にいきわたらせることです。
神戸市が待機児童を実質ゼロまで減らすことができたのは、奇をてらったことをやったのではありません。地道な努力が実を結んだからです。
一つは、全庁一体となった取り組みです。保育所整備が進まない理由の一つは用地不足です。そこで、保育所用地を確保するため、市役所の中の縦割り行政を排し、用地の情報を集約することにしました。
条例を改正し、公園内にも保育所を整備できるようにしました。公園内に保育所を建設することなど以前は考えられなかったのですが、市内4か所の公園内に保育所が建設されました。
もう一つは、保育を担う人材の確保です。「6つのいいね!」を合言葉に、保育士さんの処遇を大幅に改善することにしました。独自に一時金を支給したり、思い切った家賃助成を行ったりするなど全国トップクラスの支援策により、市内で働く保育士さんが増えていきました。
保育業務の負担を減らすことも大事です。園児の登降園の記録や保護者との連絡など多岐に渡る業務にICTを活用することで負担を減らす取り組みを進めることにしました。
保育士養成校を卒業したみなさんが保育士や幼稚園教諭になっていただくことは、とても大事です。神戸市の保育所や幼稚園で子どもたちと向き合う魅力や人材確保の取り組みを、保育士を志望する学生に知ってもらう取り組みにも力を入れました。私自身も市内養成校に出向き、学生のみなさんに、神戸市における子ども子育ての施策について直接説明し、率直な意見交換を行いました。
保育定員の拡大のためには、企業の取り組みも重要です。その柱が「企業主導型保育事業」です。これは、従業員のための保育施設を整備しようとする企業に対して、国が整備にかかる費用を補助する制度です。私自身もいろいろな会合で市内企業の経営者のみなさんに協力を求め、市内で約1,600人分の企業主導型保育事業所を整備することができました。
このように、関係者のみなさんが知恵を出し合い、情報を共有することによって、神戸市の待機児童問題は、大きく解決の方向に向かっていきました。