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日本経済新聞・電子版(有料会員限定)令和3年1月16日(土)配信

震災26年、神戸市長「成長分野に投資、果実を市民に」
阪神大震災26年 コロナを越えて

1995年の阪神大震災から17日で26年を迎える。神戸市では新型コロナウイルス禍により税収減が見込まれるが、コロナ収束後を見据えた街づくりに向け投資の手を緩めない。神戸市の久元喜造市長に今後の都市運営のあり方を聞いた。

―新型コロナ禍で市税収入が減る見込みです。それでも再開発など街づくりへの投資を積極的に進める理由は。

「一般財源をどう確保するかという問題と、投資的経費をどれくらいにするかという問題は関連しているが、次元が違う。投資的経費で言えば大阪湾岸道路西伸部(の建設)の地方負担分、三宮やウオーターフロント開発など、これらの経費は全て地方債があてられる。これを活用すれば一般財源はいらない」

「(コロナ禍で)国も地方も赤字国債、赤字地方債を出しているが、もともと投資的経費には起債をあてる。起債は将来の償還を確実にやれるか見極めながら、各事業に応じ、どの種類の起債が使え、必要とする一般財源のうち何%を起債にあてるのかを勘案しながら発行する」

「神戸市は震災の復興・復旧事業に多額の市債を発行し、たちまち行き詰まった。公債比率が急増して、償還が非常に難しくなった。財政再建団体に転落寸前までいった。(当時危ないのは)夕張ではなく神戸だと言われた」

「それを回避するため、市の職員数は阪神大震災があった1995年から2015年までで33%削った。これは全地方公共団体の平均の倍以上(のペースだ)。人件費だけでなく、投資的経費の徹底的抑制も含めた経費節減をやって、財政構造が回復してきた」

「いまの神戸市は、財政健全化法に基づく指標である実質公債費比率(財政規模に占める借金返済の割合)と将来負担比率(財政規模に対する借金残高の比率)で、だいたい政令市の上位3分の1内に入る。(財政改善が進み)投資的経費の水準は、まだ伸ばせると思う。将来的な財政負担は色々シミュレーションしているが、しのげるだろう」

「一般財源をどう確保するか。引き続き公務員の削減をやっていく。庁内デジタル化を徹底的にやって、業務の効率化を進める。コロナもあるので不要不急の事業をやめる。これは財政面だけではなくて、職員のマンパワーを無駄な仕事からコロナを中心とした緊急性の高い仕事に振り向けていく。一例として神戸市役所では職員への表彰が年120以上あるが、来年度はこれを全部辞める。コロナを最優先で進める」

「市債を発行し、成長性の高い分野に投資をすることが、将来の神戸経済の成長につながる。神戸の経済成長の果実を市民が受け取り、企業が受け取り、行政も受け取る。行政は受け取った果実をさらなる投資にまわしていけば非常に好ましい」

―阪神大震災の復興事業であるJR新長田駅南地区(19.9ヘクタール)の再開発事業は、326億円の赤字になる見通しです。

「新長田の開発は評価が分かれていた。震災発生の2カ月後にスピーディーに都市計画決定をしたが、事業は1994年度から2023年度までの長期にわたった。また、にぎわいが戻っていない、巨額の財政負担が生じたという批判があったので、終結するメドがたった時点で外部の目も入れ検証をした」

「成果については、新長田だけではないが、市営住宅建設や借り上げ住宅を用意して4年10カ月で仮設住宅を解消できた。しかし同時に、事業実施の過程でPDCAサイクルを回し、より柔軟に計画を見直すべきではなかったかとの意見があった。再開発ではノウハウをもった人材の育成も必要と言われており、将来のまちづくりに生かさないといけない」

「巨額の財政負担がなぜ生じたか。結局、事業をとにかく早く進めなければいけないという用地買収の問題と、デフレによって資産価値が目減りした。財政負担の大半が一般会計からで、リスクを行政のみが負担するというスキームだった。事業の性格は違うが、三宮のバスターミナル計画では商業床の処分は民間事業者にお願いすることになっていて、すでに(教訓を)反映している」

「新長田で指摘されるにぎわいをつくり出すという問題は、すでに合同庁舎が始動したし、兵庫県が総合衛生学院や県立大学のサテライトキャンパスをつくる。駅前バスロータリーの整備や地下街のリニューアルなどを地元と一緒に進めていく」

―神戸の街の活性化のため、産業政策の面では国内外のスタートアップの誘致や育成に力を入れてきました。コロナ禍による誘致・育成への影響や、今後の政策の見直しはありますか。

「コロナの影響を受けたのは間違いないが、スタートアップの育成や神戸での展開は順調に進んでいるのではないか。例えば米ベンチャーキャピタルと16年度から取り組んでいる起業家育成プログラムも20年度はオンラインで開催し、3分の2が海外からの応募だった。神戸医療産業都市では20年秋に研究開発施設を開設し、医療スタートアップが次々と入所している。やるべきことは分かってきており、21年度も従来の施策を拡充する方向で進める」

(聞き手は沖永翔也)

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