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日経新聞 令和2年2月7日(金)夕刊

街角ピアノ 奏でる交流
駅、広場や港…誰でも

神戸は18台、観客と一体感

 誰でも自由に弾ける「ストリートピアノ」を公共スペースなどに置く動きが広がっている。神戸市は2019年春に始め、4日には18台目が神戸港に登場。各地の自治体や民間企業も普及に取り組むほか、使わなくなったピアノなどを再利用し、全国各地に寄贈する団体もある。街角に溶け込む音色は人々の新しい交流を生み、多くの犠牲者を出した地震の被災地では被災者らの癒やしになっている。(堀越正喜、丸山寛朝)

 神戸港の遊覧船乗り場「かもめりあ」の1階。兵庫県伊丹市の山本菜月ちゃん(6)は4日朝、外枠などが透明なクリスタルピアノの椅子に座った。人気曲「パプリカ」を弾き始めると、メロディーが会場を包み、拍手がわいた。「市民の方々が聴いてくれる緊張感やもらう拍手の喜びはとても大きく感動的です」。母の紀子さん(40)は喜ぶ。
「ご自由に演奏ください」。そう椅子に書かれたクリスタルピアノは1981年から神戸ポートピアホテル(神戸市)で使われ、ストリートピアノとして神戸港に活躍の場を移した。芸術振興を目的に、早駒運輸(同市)と地元経済界の有志で設立した「神戸文化マザーポートクラブ」が管理などにあたる。

♪学校などから再利用

 4日のお披露目式では神戸出身のピアニスト、崎谷明弘さんがベートーベンの「月光」などを演奏。久元喜造市長は「ストリートピアノが親しまれ、新たな名所となってほしい」と話した。
ストリートピアノはプロからアマチュアまで誰でも演奏でき、偶然通りかかった観客と一体になって楽しめるのが魅力だ。神戸市は1923年、日本で初めてプロのバンドによりジャズが演奏されたことから「音楽の街」と呼ばれており、普及に力を入れている。
第1号は2019年3月、市がJR神戸駅近くの地下広場に設けた。民間企業や市職員の有志らが設置した例もあり、神戸空港、JR新神戸駅など計18カ所に広がった。休日には足を止めて聞き入る人も多く、一部には感想などを書き込む交換ノートを置いている。

♪東北被災地癒やす

 ストリートピアノは英バーミンガム市で始まったとされ、欧州の街角では見慣れた光景だ。国内では11年、鹿児島県の商店街で誕生したとされる。活動主体の街づくり団体「ストリートピアノJAPAN」(鹿児島県霧島市)は学校などで使わなくなったピアノを寄付してもらい、全国各地に寄贈しており、提供先は商店街や駅前、空港、東日本大震災の被災地など20カ所以上に及ぶ。
宮城県南三陸町の「南三陸さんさん商店街」は13年に寄贈を受けた。飲食ができる共用スペースに置かれ、地域の子供が弾くなどにぎわいの拠点としての役割を担う。音楽イベントの開催や、修学旅行の生徒が合唱に使うこともあるという。
ストリートピアノJAPANは12年から、毎年3月に大震災の被災地を悼む集い「ストリートピアノでつなぐ祈りのハーモニー」も企画。ピアノを寄贈した各地の関係者が参加しており、20年は関東や近畿など26カ所で開く見込み。代表の大坪元気さんは「演奏を通じて知らない人同士が出会うことで、新たなコミュニティーづくりにつなげたい」と話している。

ダンスや朗読と共演も

大阪商業大の桑島紳二教授(芸術社会学)の話

 ストリートピアノは、観客と演奏者が一体となるライブの面白さを再確認できる取り組みで、地域の新たな交流や対話が進むきっかけになる。ただ、設置場所が今後も増えると見込まれる中で、ピアノを中心にダンスや朗読を披露したり、別の楽器を演奏したりするなど、様々なパフォーマンスを組み合わせてそれぞれの場所の特徴を出す工夫も求められる。街の風物詩として定着し、SNS(交流サイト)などで楽しい様子が国内外に発信されれば、観光地としての魅力も増すだろう。

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