メディア掲載

media

日本経済新聞 令和元年10月24日(木)朝刊  神戸経済特集

人間を大切にする街へ
市街・里山 バランス良く

神戸市長 久元 喜造氏

街づくりや産業振興で新たな段階に進む神戸市。久元喜造市長に今後の方向性を聞いた。

――神戸市をどのような街にしていきますか。

「人間が大切にされる『人間スケール』の街づくりを進める。具体的には都心に高層マンションを林立させる人口の増やし方はしない。『大阪のベッドタウン』にせず、都心部ではおしゃれな街並みや買い物を楽しめるにぎわいを確保する」

「三宮に6駅あるターミナルを1つの空間と捉え、周辺を歩行者と公共交通優先の街に変える。西日本最大級のバスターミナルが入る再開発ビルは民間との共同開発だ。『世界一美しい』図書館も併設し、音楽ホールも移設する」

――高層マンションは全国的に人気ですが。

「マンションに対する需要は高く、高層マンションは否定しない。一方で分譲型の高層マンションの持続性は全国的な問題。管理組合の成り手がおらず修繕積立金が不足し、災害時には閉鎖的巨大居住空間の高層階にどう対応するかも課題だ」

「神戸は大阪市などと違い、(市街地の目安である)人口集中地区(DID)が3割未満。里山や港など多様な顔がある。人口減少時代の中、都心部に過度に人を集めず(郊外の)駅前などを整備してバランス良い発展を目指す」

――新産業育成にはどう取り組みますか。

「神戸にはものづくり企業が集積しているが、その業態は時代に合わせ変化している。阪神大震災以後にゼロから取り組んできた神戸医療産業都市の分野と融合させる。医療機器大手シスメックスと川崎重工業が立ち上げ手術ロボットを開発するメディカロイド(神戸市)が好例だ」

「2016年から米ベンチャーキャピタルの500スタートアップスと連携した全国初の起業家育成プログラムを始めた。18年は海外からの応募が国内を上回り、世界的な認知も高まった。19年はヘルスケア分野のIT企業を対象に育成する。神戸から世界に雄飛できる環境を整え、イノベーションが起こる街に変える」

――神戸港の復権に向けた取り組みは。

「短期的にみると韓国・釜山などに流れている国際貨物をどう取り戻していくか。アジア各港の貨物を神戸から欧米航路に載せるため、取り組みを進める。国際的な港湾競争で生き残るため港湾コストを下げる必要がある。」

「今後はフェリー輸送を有効活用したい。長距離トラックの運転手不足が見込まれ、海上輸送は改めて見直されてくる。フェリー大型化に対応した港湾整備を進める」

三宮 都市の進化形

 上品さや洗練されたイメージで語られてきた神戸が、街の姿を変えようとしている。玄関口の三宮駅周辺で再開発計画が動き出した。中心部だけでなく旧港湾地域(ウォーターフロント)などを含むエリアを「都心」と設定し、広範囲のにぎわい創出を目指す。

 同じ関西でも大阪・梅田周辺が大きく変貌しているのに比べると、神戸・三宮周辺は変化が乏しい。震災復興が優先される中で、駅前を中心とした街づくりは滞りがちになっていた。震災から立ち直るなかで、行政や経済界は真剣に街の未来像を描き始めた。

車道減で歩道増

 ハード面では、2021年春に阪急電鉄の駅ビルが完成するのを皮切りに、西日本最大級のバスターミナルを含む高層複合ビルや市庁舎の建て替えなどの計画が進む。解体中のJR三ノ宮駅前のターミナルビルは23年度にも建て替える。10年後には三宮周辺に高さ100メートルを超える複数の高層ビルが姿を現すはずだ。

 だが高層ビルの建造競争が目標ではない。「人と公共交通優先の空間」―。神戸市は三宮再開発の方向性をこう表す。三宮を起点に街全体への回遊性を高める狙いだ。

 神戸の中心部は10車線の国道2号線が街の東西を大きく貫いていて、南北のヒトの流れが分断されていた。そこで市は25年に6車線に、30年ごろには3車線まで減らすことを決めた。そのぶん歩道を広げ、飲食店などが出店できる空間にする。

ブランド復権へ

 人々が街中を回遊するための仕掛けづくりも始まった。ウォーターフロント地域では、水族館などの集客施設が21年度に開業し、神戸のシンボル「神戸ポートタワー」も刷新される。湾岸へのアクセスも改善する。市などは三宮再整備関連で30年までに約700億円の投資を見込み、神戸ブランドの復権を目指す。

 神戸の活性化を後押ししそうなのが神戸空港だ。市中心部から新交通で約18分という好立地にありながら、06年の開港以降、発着の上限が1日60便に制限されていた。これが関係者による調整の結果、発着上限が80便に緩和された。25年度には国際化も検討する。

 規制緩和を受けて、フジドリームエアラインズ(静岡市)が新規就航に名乗りを上げた。三輪徳泰社長は「神戸空港は関西の拠点として魅力的」と話す。スカイマークも8月に増便し、空の玄関口の拡充でヒトやモノがさらに動き出す。

 神戸と同規模の川崎市や福岡市は1990年から直近までに人口が30%前後増えたが、神戸は3%増。経済力を示す市内総生産(15年度、名目)は90年度との単純比較で福岡が約40%、川崎が約27%増えたのに、神戸は約4%増にとどまる。神戸の潜在力を引き出す上でも重要な街づくり。市経済のけん引役となれるか期待は高い。

郊外再生へ若年層を誘導
タワマン規制 都心集中緩和に期待

 神戸市は全国的に先駆けたマンション規制を始める。市中心部で高層マンションを規制する条例を2020年7月に施行。都心部に人を集めず、郊外ニュータウンを再生し若年層を誘導する。

 都心居住の需要が高まり、神戸中心部でも高層マンションが増加する。来年7月に三宮駅周辺の22.6ヘクタールでマンションを含む住宅建設を禁止。外側の山陽新幹線・新神戸駅やJR元町を含む292ヘクタールでは、タワマン建設ができなくなる容積率に減じる。都市部はオフィスや商業施設などを誘致する。

 市が居住の受け皿として重視するのは郊外ニュータウンだ。市営地下鉄西神・山手線の終点、西神中央駅は21年度にも駅前を再整備する。同駅は駅近くのニュータウンの街開き後に開通したが、若い世代の流出が目立つ。魅力を高め子育て世代の住み替えを促す。

 新神戸と市北部の谷上をつなぐ北神急行電鉄(神戸市)は20年に市営化する。相互直通する市営地下鉄と一体化し、運賃を下げることで、郊外の居住者が使いやすくなる。持続可能な街づくりでは20年度にも分譲マンションに管理組合の認証制度を導入。修繕積立金の状況などを市がチェックする。

LinkedIn にシェア
LINEで送る
Pocket