メディア掲載

media

日経新聞 平成29年12月12日(火)夕刊 「兵庫経済特集」

日経新聞 平成29年12月12日(火)夕刊 「兵庫経済特集」

航空機産業 中小を訓練
 自前で部品検査可能に

 18日、神戸市で航空機部品の製造に不可欠な非破壊検査員を養成するトレーニングセンターが開設される。兵庫県が設置した同センターは、国際認証規格(NAS410)に基づく国内初の訓練機関。浸透液と磁粉、超音波の3種類の検査方法を学ぶプログラムをそろえ、それぞれ2~3週間かけて認証を取得する。
 加工や熱処理など工程ごとに部品が大手メーカーと中小企業の間を行き来する非効率な「ノコギリ発注」は、中小に非破壊検査員がいないことも大きな要因だった。海外に行かなくても認証が取得できるようになり、中小のハードルは大幅に下がる。兵庫県は国の助成制度に上乗せして受講者向け補助制度を用意し、航空機産業の育成を目指す。
 同センターの運営には、川崎重工業といった地元企業と行政などで構成する「新産業創造研究機構(NIRO)」が協力する。NIROは1995年の阪神大震災からの経済復興を目的に設立され今年で20年。航空機や水素、ロボット、健康・医療といった先端分野で新規参入や技術開発のさらなる支援が期待される。
 国内屈指の技術基盤があるのもこの地の強みだ。代表格であるスーパーコンピューター「京」は産業利用でも成果を上げており、2020年ごろには後継機「ポスト京」が稼働する予定だ。11月にはトヨタ自動車など国内自動車メーカーと理化学研究所が、ポスト京によって革新的な車の設計手法を開発するコンソーシアム(共同事業体)を設立。シミュレーション(模擬実験)の技術開発に挑む。

久元神戸市長に聞く
 起業の自己増殖 理想

 県都・神戸市はスタートアップ企業育成や新産業集積に向け、どのように成果を出していくか。今秋から2期目の久元喜造・神戸市長に取り組み方を聞いた。

 

―スタートアップ育成で現在の手応えは。

 「ようやく芽吹きつつある。起業家が神戸からビジネスを展開し、その動きが発信されてまた起業家が生まれ、次の起業家にも助言するといった自己増殖が起きれば理想的だ。まだそこまでは行かない段階だ」
 「起業家やこれを目指す人、支援者らのコミュニケーションが神戸で生まれ、持続し、コミュニティーになるといいと考えている」

―神戸の新産業はどんな姿を目指しますか。

 「神戸はものづくり産業で発展してきた。これを進化させることが大事だ。未来産業の創出、都市型生活文化産業の集積、医療産業都市の進化もめざす」
 「未来産業の一つの柱は水素エネルギーだ。時間はかかるが、水素の貯蔵、輸送、発電といったサプライチェーン構築に関わり、様々な企業が参入できるようにしたい。海洋産業も潜在力があると思う。神戸は海に面し、造船産業などもある。海洋資源の探索などで必要な機器の裾野は広い」

―医療機器分野のシスメックスに続くような成長企業の台頭が望まれます。

 「行政が言うのでなく、民間の動きを期待したい。新産業の研究などを進めるうちに企業が参入、成長する可能性は高まると思う」

―生活文化産業の集積状況はどうみますか。

 「神戸ではIT(情報技術)と文化が融合するようなイベントはあるが、まだ集積は進んでいない。大都市に生活文化産業は不可欠。様々な発想をする人が集まれば新産業の起爆剤にもなる」

 

スタートアップ支援 活発
 集積拠点を整備 育成プログラム

 重厚長大産業依存からの脱却を目指し、兵庫県や神戸市で次世代の成長産業に挑戦する動きが広がってきた。起業家を育成するプログラムを展開したり、創業間もないスタートアップ企業やIT(情報技術)関連企業が集える拠点を整備したりして地域への集積を図っている。
 「ビジネス拡大にはみなさんの力が必要です」。10月、天候などで不安定になりがちな農業の生産性向上を図るリッスンフィールド(横浜市)などスタートアップ20社は、神戸市と東京都内で投資家らに協力を訴えた。いずれも神戸市が米有力ベンチャーキャピタル(VC)の500スタートアップスと開催した約2カ月半の起業家育成プログラムの参加企業で、シリコンバレーの専門家からの助言を基に改良した事業戦略をアピール。資金調達や大企業との提携につながった企業も出てきた。
 神戸市が同プログラムを開くのは昨年に続き2回目。市は独自の育成プログラムや起業家同士が集えるオフィスも持つ。市民が病院に行く際に使うライドシェアの検索アプリの開発など、地域課題を市職員とスタートアップが連携して解決する全国でも珍しい試みも12月中に始める。「スタートアップの活躍の場を生み出したい」(多名部重則・新産業創造担当課長)
 兵庫経済は戦後、造船や鉄鋼をはじめとする重厚長大産業がけん引してきた。川崎重工業や三菱重工業、神戸製鋼所などの大企業を支える中小企業が県内に集積するが、海外勢とのコスト競争は厳しい。成長分野を取り込んだ新産業の育成は待ったなしだ。
 兵庫県が10月に三宮の商業ビルに開設した「起業プラザひょうご」は17室のオフィススペースがほぼ満室だ。NPO法人コミュニティリンクが管理運営し、会員同士の交流の場も提供。アプリやシステム開発を手掛ける起業家らが入居する。
 県は自然豊かな地域での起業も2013年度から支援しており、高度IT人材の人件費を年間100万円助成するといったメニューをそろえる。丹波地域には5社が進出し、集積の核ができつつある。

 

水素や医療 先行

 裾野が広い水素や医療も注力産業だ。10日、水素を燃料とする電力を世界で初めて市街地に供給する発電施設が、神戸市のポートアイランド内に完成した。川崎重工業と大林組が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、水素ガスタービンを活用して電気と熱を供給する設備を整備。来年2月に実証実験に入る。神戸市が国際展示場や市民病院など周辺の公共施設への電力供給に道筋を付けた。
 水素エネルギーを活用する社会の到来へ先手を打った取り組みとなる。環境先進都市とアピールするとともに、地域の中小企業などにも水素のプラント関連の部材などに自社技術を応用する道を開き、環境対応型企業の育成につなげる考えだ。2020年度にはオーストラリアで作った液化水素を輸入するサプライチェーン構築に向けた実証基地を神戸港で稼働する。
 18年に構想から20年の節目を迎えるのを前に、340以上の企業・団体が集積する神戸医療産業都市。8月に本社を同都市に移転させた素材の表面加工大手、トーカロなど異業種による医療産業参入の実績も増えてきている。
 1日には目の研究から診療、生活支援まで一体で対応する施設「神戸アイセンター」が開業した。一般医療を提供する病院を兼ね備えることで、iPS細胞など先端の再生医療研究を加速させる狙いだ。小児がん患者らに粒子線治療をする「神戸陽子線センター」も同日開設された。

LinkedIn にシェア
LINEで送る
Pocket