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8月22日の日経新聞朝刊全国面に、神戸市の起業支援の取り組みが紹介されました

280822日経新聞(神戸「起業のまち」)日本経済新聞 平成28年8月22日(月) 
「神戸「起業のまち」へ船出」
市外も対象、企業流入狙う

 神戸市は8月1日から米有力ベンチャーキャピタル(VC)の500スタートアップスと起業家育成プログラムを始めた。50以上の国・地域で投資実績がある同社が日本で起業家育成を展開するのは初めて。だが世界トップクラスの講師の指導を受けようと集まったのは全て市外の企業だ。同市は行政の枠組みにとらわれず「世界で活躍できる起業家が育つまち」を目指している。

<市、米VCと育成プログラム>
 「利用者のペルソナ(人物像)を印刷して会社の壁に張ってみて」。神戸市内の大学で開かれた市の起業家育成プログラム「500スタートアップス 神戸 プレアクセラレータ」では、顧客の絞り込みや効果的なマーケティングについて、500スタートアップスの外国人講師がレクチャーをしていた。
 同社は50以上の国・地域で創業間もない企業1500社以上に投資する。神戸市と組む6週間のプログラムには、米シリコンバレー本社から約30人の講師を派遣。ほぼ全員が起業経験を持ち、マーケティングや資金調達など起業に必要なスキルを身につけている。

(資金調達に道)
 プログラム参加者で自然栽培の野菜の販売サイトを運営する高橋秀彰さん(34)は「経験をもとに独自の発想で事業を見直そうとしてくれる講師が心強い」と信頼を寄せる。最終日には投資家らを招いて自社のビジネスを紹介する場も設けられる。500スタートアップスは米マイクロソフトや米IBMなどをパートナーに持つだけあって「有力な資金調達先や提携先を見つける機会が多い」(多名部重則・神戸市新産業創造担当課長)。
 「神戸で起業家を育成するエコシステム(生態系)の構築に協力してもらえませんか」。昨年6月、シリコンバレーの500スタートアップス本社を訪問した久元喜造・神戸市長はこう切り出した。エコシステムとは投資家や大企業、大学などの連携により、起業家育成を促す環境のことだ。市長の提案は日本での事業展開を模索していた同社にとって思ってもみないチャンスだった。
 日本のベンチャー投資は発展途上といわれる。ベンチャーファイナンスが専門の忽那憲治・神戸大学教授は「起業したばかりのベンチャーを支援する投資家が少なく、起業家育成の環境は成熟していない」と指摘する。
 500スタートアップスは昨年9月、東京に拠点を構え計3000万ドル(約30億円)を投資すると発表した。しかし神戸で行うのは投資を伴わない育成プログラム。他の海外VCに先駆けて日本で有能な起業家を育成できる環境を作れば、投資先開拓につなげやすい。同社でアジア・中東地域の起業家育成に取り組むザファー・ユニス氏は「日本で有力ベンチャーが生まれるエコシステムを作りたい」と話す。
 自治体の起業家支援策は市税を投入するため、対象を域内の企業に限るケースがほとんどだ。だがこのプログラムに参加するベンチャー企業21社のうち兵庫県内の企業はわずか1社。しかも神戸市内の企業はゼロで、県外や海外の企業ばかりだ。「参加者を広く募り、国内の起業家育成のあり方全体に影響を与えようとしたことは評価すべきだ」とユニス氏は言う。
 プログラムは神戸市にとって利益にならないようにも見えるが、同市のビジョンは長期的だ。協賛企業には三井住友銀行や地元のアシックス、人材大手のSRCグループ(神戸市)などが名を連ねる。市は来年度、連携先を探している地元企業らと、国内外から神戸に集まる起業家を結びつける新たな育成プログラムを計画。市内の「神戸医療産業都市」で活動するベンチャー企業への追加支援も検討している。

(産業転換で遅れ)
 神戸が起業家育成に力を入れるきっかけは産業構造の変化だ。同市の発展を長年支えた重厚長大産業の成長が鈍化し、ファッションやデザインなどソフト産業の振興も道半ば。若者の流出も相次ぐ。2015年の国勢調査速報によると人口は153万7860人と10年比0.4%減で、政令指定都市の比較では福岡市に抜かれ6位になった。
 こうした状況で神戸は、遠回りにも見える市内外の起業家育成という政策を選んだ。「育った起業家がいずれ神戸に戻り、育成する側に回るという循環を作る」と多名部課長は自信を見せる。今回の試みは同市がシリコンバレーにならって「起業のまち」として歩み出した第一歩にすぎない。イノベーションを生む都市として、新たな成長軌道に乗る道のりは長い。

<各地で広がる起業支援 ~柔軟な対応強み~>
 企業の海外進出が進み国内で企業誘致が難しくなったことをきっかけに、起業家育成に力を入れる自治体は多い。
 国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に選ばれた福岡市では、昨年12月から外国人が起業する時に必要な要件を緩和する「スタートアップビザ」を受け付けている。事務所開設や資本金500万円以上といった要件を満たさなくても、市に事業計画を申請して要件を満たす見込みがあれば半年間の在留資格を取得できる。法人減税などの特徴も打ち出し国内外から起業家を呼び込んでいる。
 長野県松本市は商工会議所や地元の金融機関、税理士などと連携し、創業後の支援も充実。仙台市は起業支援センターで女性相談員が起業相談に乗るほか、起業セミナーには託児サービスを付けるなど女性の起業を支える。各都市の開業率を比較すると福岡10.3%、仙台9.9%と神戸の8.7%を上回る。
 起業家は創業の環境が整っている東京に集中するといわれるが、最近は活動の拠点を地方に見いだす起業家も現れ始めた。東京で女性用下着のオンライン試着サイトを手掛け、今回のプログラムに参加した本間佑史子さん(31)は「東京では人工知能(AI)など注目分野のベンチャー企業に人気が集中し、起業の『勝ちパターン』が決まっている印象。地方都市の方が多様な事業に柔軟に対応してくれる投資家が多い」と話す。
 起業家を呼び込むため、各地域の魅力をどう打ち出すかが問われている。

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