対談・インタビュー

interview

自治体通信Vol.15(2018.10) P.34~37

「働き方革命」を推し進めてめざす
神戸市流の「生産性向上革命」

~課題発見、解決型の仕事で職員に活力を~

神戸市(兵庫県)では働き方改革の推進に向け、さまざまな取り組みが行われている。行政改革を進めながら、市民サービスを向上させるとともに、職員にとって働きやすい職場づくりを行っていくのが狙いだ。「働き方改革はまだはじまったばかり」と話す市長の久元氏に、取り組みの詳細やめざすべき組織のあり方などを聞いた。

ほかの自治体に先駆け
新たな制度を意欲的に導入

―神戸市では、自治体職員における「働き方改革」を積極的に推し進めています。制度面における取り組みの詳細を教えてください。

 まず、平成27年に「在宅勤務制度」を導入。職員の、「仕事と家庭生活との両立を図る」「家族・友人との時間や自己研さんの時間を増やす」「通勤負担を軽減する」ことなどが目的です。
 そして、平成29年に「フレックスタイム制」「地域貢献応援制度」「高齢者部分休業制度」を新たに導入しました。「フレックスタイム制」は、職員が「仕事と家庭生活との両立を図る」という観点から、育児や介護を行う職員を対象として、柔軟な勤務形態の選択を可能にしています。政令指定都市として初の本格導入です。

―「地域貢献応援制度」と「高齢者部分休業制度」は、どういう取り組みですか。

 まず「地域貢献応援制度」ですが、職員が勤務時間外で、社会性・公益性の高い地域貢献活動をする場合において、市が正当だと認めた場合は報酬をえて従事することを許可するものです。公務員は、つねに地域と結びついた存在でなくてはなりません。地域でいろんな活動にトライしてもらい、自治体職員としての知識や経験をより豊かなものにすることがねらいです。「公務員の副業を認める制度」として世間から注目されましたが、先述したとおり民間企業の副業推進とは少し趣旨が違います。
 そして「高齢者部分休業制度」。これは、55歳から段階的に勤務時間を減らして、たとえば1日の勤務時間を減らす。あるいは週の勤務日を減らす。それで、徐々に第二の人生になだらかに移行していく――という制度です。そして「地域貢献応援制度」を活用して、大学で非常勤講師をしたり、NPOなどを立ち上げたりして、場合によっては報酬を受け取ることも考えられます。

庁内に閉じこもるのではなく
積極的にまちへ出よ

―なぜ、こうした制度を積極的に導入しているのでしょう。

 神戸市における、「生産性向上革命」のためにほかなりません。
 「労働生産性」に焦点をあてた場合、民間企業を含め、日本は国際的に低いといわれています。こと自治体においては、概念としてもまだまだ定着していません。しかし、これだけ人口減少が叫ばれている時代のなかで、生産性を上げられない自治体は生き残れないだろうと思います。
 生産性向上というと、「いかに人を減らして効率化を図るか」という視点ばかりに目が行きがち。しかし、生産性向上でもっと大事なことは、職員一人ひとりが大きな仕事の喜びを感じられるようにすることです。目をキラキラと輝かせて課題を発見し、それを解決しようとする意欲をもち、チームとして解決のためにチカラを発揮していくことが大切です。
 そのためには、職員は庁内に閉じこもるのではなく、まちに出てさまざまな現実に触れる必要があります。地域を知り、さまざまな人と出会い、「職員」としてではなく、「市民」として地域のために汗を流す。このことは、きっと本当の意味での生産性向上につながると確信します。

コミュニケーションツールで
自由に意見ができる環境を

―職員による制度活用は進んでいるのですか。

 正直、進んでいるとはいえません。「地域貢献応援制度」が活用されたのは、平成29年度が2件で平成30年度はいまのところ1件。「高齢者部分休業制度」はそれぞれ3件と4件。「在宅勤務制度」は比較的早く始めたので、平成29年度は135件、平成30年度は、いまのところ80件の活用事例があります。「フレックスタイム制」は平成29年11月導入以降、82件です。神戸市は、市長部局だけで約8000人が働いていることを考えると、まだまだ微々たるものです。

―なにか対策案があれば教えてください。

 職員に制度を浸透させるための、コミュニケーションツールの導入を検討しています。まだ試行段階ですが、職員が自由にチャットができるようなグループウェアなどを検討しています。
 大きな組織になるほど、コミュニケーションを図るのは難しいもの。また自治体では、多くの幹部職員が、マネジメントを正確に行うためには「市長→副市長→局長→部長→課長→係長→担当者」というルートで指示を出し、その逆ルートで意見を伝えていくという指揮命令系統でないと、統制がとれないと考えがちです。
 しかし、メールやSNSなどが普及し、コミュニケーションの方法が激変した現代において、完全にそういった時代は終わったと思います。役職に関係なく自由に議論を交わし、コミュニケーションを図ることが大事。コミュニケーションを通じて理解を広げることができれば、制度が浸透していくと考えています。

積極的に社会とかかわり
交流を図ることが重要

―今後、どのように「働き方改革」を進めていくのでしょう。

 職員が上からいわれた仕事をひたすらこなすのではなく、積極的に社会とかかわり、庁舎以外の人と交流を図っていく。そこで新たな知見をえて、課題発見、解決型の仕事ができるような組織にしていきたいですね。職場でも、私生活においても喜びを感じることができるようにすることが「働き方改革」の眼目です。このことは決して間違っていないと、私は固く信じています。

[プロフィール]
昭和29年、兵庫県神戸市生まれ。昭和51年に東京大学法学部を卒業後、自治省(現:総務省)に入省。内閣官房内閣審議官、総務省大臣官房審議官(地方行政・地方公務員制度、選挙担当)、同選挙部長、同自治行政局長などを歴任。札幌市財政局長、京都府地方課長、青森県企画課長、石川県財政課など地方自治体でも勤務。平成24年、神戸市副市長を経て、平成25年に神戸市長に就任する。現在は2期目。

「働き方改革」における神戸市のおもな制度

【在宅勤務制度】
「仕事と家庭生活との両立を図る」「家族・友人との時間や自己研さんの時間を増やす」「通勤負担を軽減する」ことなどを目的とした制度。週4回を上限に自宅を勤務公署として執務が可能。希望する職員には、軽量薄型ノートパソコンを貸与。職員は、自宅からメールや庁内システムの利用、ファイルサーバに保存したデータの編集が行える。すべての一般職の職員が対象。

【地域貢献応援制度】
市の職員が、これまで培った知識・経験などを活かして、市民の立場で地域における課題解決に積極的に取り組むことを後押しする制度。社会性や公益性など、一定の要件のもとで、継続的な地域貢献活動に報酬をえて従事する場合の取り扱いを定めている。勤続3年以上の職員が対象。

【高齢者部分休業制度】
第二の人生に移行していくのに備え、地域活動に従事するなど、個人の状況にあわせた生活設計を立てることが可能で、高齢職員の勤務形態の選択肢を広げる制度。1週間あたりの勤務時間の2分の1を超えない範囲で、15分単位で休業を取得できる。なお、休業取得期間の給与は、減額される。定年の5歳前に達した一般職の職員が対象。

【フレックスタイム制】
職員が仕事と家庭生活との両立を図りやすくするため、柔軟な勤務形態の選択を可能にすることを目的とした制度。単位期間ごとに勤務時間を割り振る。全員が勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を10時~15時までの4時間とし、始業時間を7~10時、終業時間を15時~20時の範囲で設定できる。育児や介護を行う職員が対象。

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