対談・インタビュー

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J2TOP 2019年3月号 P.6~7

J2TOP 2019年3月号 P.6~7
一般社団法人 内外情勢調査会 神戸支部合同懇談会(2019年1月21日開催)

「続・持続可能な大都市経営」

「続・持続可能な大都市経営」
久元喜造 神戸市長

兵庫県神戸市の久元喜造市長は1月21日、内外情勢調査会神戸支部懇談会で「続・持続可能な大都市経営」と題して講演、新橋-神戸間に東海道本線が開業した年に神戸市が誕生した歴史的背景を詳述。大都市へと発展する基盤は神戸開港と、鉄道交通の西の拠点になったことだったと指摘した。一方、阪神大震災などの試練を乗り越える中で、人口減少などに見舞われる実態も踏まえながら、経済成長と歳出抑制の両面に取り組みつつ、持続可能なまちづくりに取り組む決意を強調した。
(文責・編集部)

大震災などの試練乗り越え

 神戸市にとって、去年は神戸開港150年、兵庫県政150年、明治150年という年だった。150年前の開港直後に起きた神戸事件を収束させた一人が伊藤俊輔、後の伊藤博文公。伊藤は兵庫県の発足とともに県知事に就任。その後、版籍奉還、廃藩置県に連なる建白書を執筆する。廃藩置県などを経てわが国の近代的な統治機構が整備されていく出発点が神戸だった。神戸市は、大日本帝国憲法が発布され、新橋-神戸間に東海道本線が開業した1889年に設置された。神戸が発展してきた基盤は、神戸開港と、鉄道交通の西の拠点になったことだ。こうしたことを活用して神戸はわが国を代表する大都市となった。第2次世界大戦で神戸は焼け野原になり、阪神大震災に遭うなどもした。神戸市政はそういう形で試練を乗り越えてきた。

居住選好の変化への対応

 その神戸も、人口で見ると減少傾向に入ってきた。わが国全体が人口減少にある中で、われわれはこれを真正面から受けとめ、どういったまちをつくっていくのかをしっかり考えていかなければいけない責任がある。神戸市の人口が減っている背景には、郊外から都心へ、一戸建てからマンション、特に高層タワーマンションへと居住に関する選好が変わってきたことがある。ほとんどの区は人口が減るか横ばいの中で、中央区は突出して増えている。高層タワーマンションが増えているからだ。こうしたことをどう考えたらいいのか、まちづくりを考える上での重要な視点だ。また、生活の質、クオリティーを高めていくことで、住む、働く、学ぶ場所として神戸を選んでもらうようなまちづくりを考えていかなければならない。その際に、財源をどう調達するか、受益と負担の関係をどう考えるかが重要だ。

成長と歳出抑制の両面に注力

 神戸市の一般会計予算の歳入額は、2017年度決算では7789億円。市税が35%、地方交付税が8.8%、国庫支出金が18.9%、市債が10.6%、県支出金が4.8%といった構造だ。このうち、人件費や医療費、介護関係費用、建物の維持補修費など、その年に消えてしまう経常経費は市民からの税金と、税金で足らない分は地方交付税などで賄うことが基本だ。しかし、16年度の経常的経費7047億円のうち、今の世代が負担する税金などで賄われる分は5512億円。将来世代には979億円もツケを回している。高齢者人口が増え続け、生産年齢人口は減っていく中で、適切な負担はお願いしていかざるを得ないし、歳出抑制策を講じることが不可欠ということも間違いない。ただ、こうした状況は、歳出抑制や、負担を求めるだけで解決されるべきではない。どう経済を成長させて果実を生み出すかという発想と、経費抑制に極力努める視点が重要だ。

 神戸市は、もう一度知恵を結集して経済を成長させ、それを市民も行政も受け取るようなことが望ましい。神戸市は阪神大震災後に財政危機が続いた。だが、矢田立郎前市長のもとでこれを乗り切った。20年間に職員を33%削減するなど、徹底的に節減し、新規事業も基本的には取り組まない形で財政再建を行った。このため、ようやく新しい事業に取り組めるようになった。これからは新しい神戸市経済を成長させるような投資を行って成長に結び付け、そこから市民と企業が果実を受け取り、行政も税収として受け取るサイクルをつくらなければいけない。これが私の変わらぬ問題意識だ。

交通の要衝の優位性高める

 神戸経済を成長させるためにはどうしたらいいのか。神戸が大都市であり続けてきた要因は交通の拠点ということにある。港、鉄道に加えて、戦後は高速道路、13年前には神戸空港が開港した。こうした優位性をどう高めていくのかが大事だ。16年度に大阪湾岸道路の着工が決まり、18年度から事業が本格的にスタートした。もう一つは、都心全体の魅力の向上・再整備で、特に重要なのがウォーターフロント。すでにホテルは開業し、ウォーターフロントも大きく変わっていく。港については、17年のコンテナ貨物取扱量が過去最高となり、18年も過去最高を更新する見込みだ。神戸空港は、旅客数、搭乗率が過去最高となっている。神戸空港については、発着便数、運航時間、国際線は飛ばさないといった規制がなされている中で、現在の規制を緩和・撤廃していくことが重要だ。しかし、「とにかく撤廃してくれ」と言うだけでは実現しない。「関西全体の基幹空港は関西国際空港」ということを前提に、神戸空港が関西全体の航空需要の拡大に貢献、関空などの3空港が適切な役割分担のもとに、それぞれの役割を果たしていくということだ。

持続可能なまちづくりを

 都市計画としては、オールドタウンに対する対応と、高層タワーマンションに対する対応が重要だ。そこで、タワーマンションは長い目で見て持続可能なのかという問題意識から研究会をつくった。テーマの一つは持続可能性の確保ということ。修繕積立金の不足で、20年、30年経ったときに大規模修繕がしにくくなる恐れがあり、こうした問題についての意識を持ってもらうようにしなければいけない。もう一つは、良好なコミュニティーの形成ということ。タワーマンションは内部の方々だけでなく、外との交流も希薄になっている。このため、コミュニティーづくりをどうしていくかも考えていかなければならない。さらに、中央区という特定のエリアに人口が集中することの是非も考えていかなければいけない。

 こういう形で持続可能なまちづくりを考えたときに、行政はタワーマンションの問題と真正面から向き合わなければいけないのではないか。また、空き家・空き地対策も重要だ。老朽化した危険な空き家は除去し、使える空き家は活用していくことが大事。マーケットで住み替えがうまく進むような仕組みはつくっているが、空き家だけでなく、空き地もどうすれば活用していけるか。隣地と統合して建て替えたいという場合にも補助できるような支援策があることを皆さんに周知することも含めて考えていきたい。

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