メディア掲載

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朝日新聞 令和元年11月21日(木)朝刊

職務継続の恐れ避ける

加害教諭休職処分 遡及処罰では
短期間で条例改正 久元喜造 神戸市長

神戸市立東須磨小学校の教員間暴力・暴言問題は社会に衝撃を与えた。問題の背景には何があり、再発防止には何が必要なのか。有識者を含む3人にインタビューする。初回は、加害側教諭への異例の分限休職処分に道を開いた久元喜造・神戸市長(65)に話を聞いた。

 

東須磨小問題(上)

―東須磨小問題をどのように受け止めていますか

今回の事案は、衝撃だった。神戸の教育に対する信頼が大きく失墜した。全国的にも波紋が広がった。だから、何が起きたのかということと、なぜ起きたのかということを解明しないといけない。

―市長としての責任をどう果たしていきますか

教育委員会は市長から独立した執行機関で、政治家である市長が教育行政に介入すべきでないという考え方で制度が設計されている。この権限配分を尊重した上で、教育委員会の改革をうながし、支援していくことが任務だと思っている。今回の問題が例外的な事象だが、背景には学校現場における教員間の関係、校長と教員の関係、教育委員会と学校との意思疎通のあり方などの課題がある。教育委員会が学校現場を十分に把握できていないガバナンスの問題もある。(首長と教育委員会の協議の場である)総合教育会議の開催頻度を増やし、議論を深めたいと思っている。

―改正された市条例に基づいて市教委は加害側4教諭を分限休職処分とし、給与の支払いを止めました

条例改正案の提案から市議会での可決、市教委による処分決定まで短期間ではあったが、提案に際しては地方公務員法の解釈や条例と法律の関係、分限や懲戒とは何なのかという部分を自分なりに十分考え抜いた。改正を急いだ理由としては、市民の怒りが相当なもので教育委員会の電話がパンク状態だったということもあるが、論理は十分に整理したと思っている。

―条例改正前の行為を理由に不利益処分を科すのは、遡及処罰を禁じた憲法の趣旨に触れるのではないかという指摘もあります

憲法が明文で禁止しているのは、刑事罰の遡及。不利益な処分を科す場合は、確かに、その理由となる行為が起きた時点の法律に基づいて行うというのが原則だ。懲戒処分の場合にはそれがあてはまる。
しかし、分限処分は個人の非違行為を原因にしてはいるものの、個人の責任追及に狙いがあるのではない。問題を起こした職員が引き続き職務に従事する可能性があって、それが公務の適正な遂行を阻害する可能性がある、という状況を解消することが目的だ。
分限処分の要因をなす行為は過去のものだが、処分の対象はあくまでも目の前の現実。批判は必ずしもあたらないと考えている。

―教育委員会と首長の権限の分け方について、あるべき制度はどのようなものだと考えていますか

この問題が発覚する前から、教育行政は市長も担えるようにすべきだと考えてきた。現行の教育委員会制度の大きな意義は、教育行政の政治的中立性を守ることにある。しかし、政治的中立性が重要なのは教育だけでなく、ほかの分野でも同様だ。合理的判断を離れて政治的な判断を優先させたような施策には、市民が納得しないだろう。ただ、教育委員会制度自体について国に何か要請するつもりはない。今回、東須磨小問題という非常に重大な事案をおこしたのは神戸市。原因を制度に求めるべきではない。教育委員会と連携・協力して、現行制度の枠内で失墜した教育行政の信頼を回復していきたい。

(聞き手・川嶋かえ)

東須磨小問題

神戸市立東須磨小学校の30~40代の男女教諭4人が同僚の男女教員4人に暴力や暴言を繰り返していた問題。被害者の男性教員(25)が体調を崩し、今年9月から欠勤したことがきっかけで発覚した。神戸市教育委員会は、この男性教員が昨年以降、ロール紙の芯でたたかれる▽車を汚される▽激辛カレーを無理やり食べさせられる――などの被害を受けていたとしている。前校長や現校長は行為の一部を把握していたが有効な手を打てず、市教委への具体的な報告もしていなかった。市教委は加害側4教諭を10月31日付で分限休職処分とし、給与支払いを止めた。また、外部調査委員会に事実調査を委ね、加害側教諭の懲戒処分を検討している。

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