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神戸新聞(平成30年5月30日朝刊)


神戸新聞 平成30年5月30日(水)朝刊20面

認知症への理解 深めたい

母親の言動 広報誌に明かす
久元・神戸市長のコラムに反響
家族らの負担 分かち合う街に

認知症支援を特集した神戸市の広報誌「KOBE」5月号で、久元喜造市長(64)が、現実と幻想の間をさまよう母親の症状などを紹介した自筆コラムが、患者家族らの反響を呼んでいる。当時東京にいた久元市長が施設に入所する母を見舞った際のエピソードで、私的な経験とともに施策への思いを発信するのは異例。メッセージに込めた思いを聞いた。(石沢菜々子)

―なぜ、自身の体験を。

「認知症が自分の身に起きたり、親が発症したりするのは特別なことではない。母は10年ほど前に亡くなったが、私と同じような経験をした人は多いと思う。認知症は特別な病気ではなく、『誰にでも起こりうるものだ』というメッセージを伝えたかった」

―神戸市では4月に「認知症の人にやさしいまちづくり条例」が施行された。認知症施策に力を入れる。

「それは個人的な思いとは別だ。条例は2016年のG7神戸保健大臣会合での認知症施策の推進を盛り込んだ『神戸宣言』の採択を受けたもので、市民ニーズも非常に高い。わが国全体が向き合わねばならない課題でもある。認知症の高齢者らが事故を起こして損害賠償を求められた際に、給付金を支給する全国初の制度を含め、パイオニア的な自治体にしていく」

―その中で、コラムを通じて認知症への市民の理解を広めようとした。

「つい少し前まであんなに元気で、自分に対して厳しく、優しく育ててくれた親が、別の世界で生きているような言動を示す。それは大変つらいことだ。そんな感情に加え、日常生活にさまざまな支障が出てくる。できるだけ家族の負担を緩和し、家族に寄り添っていくべきではないか」

―今後力を入れるのは。

「対策は総合的に進めていくが、一つは認知症の人に優しい目を注ぐこと。例えば、行方不明になった人を警察官が保護した後、一時的に老人ホームで預かる仕組みを整えた。認知症の当事者に関わる人たちが支え合えるようにしたい。神戸は市民が助け合って震災を乗り切ってきた街。できるだけ負担を社会全体で分かち合う姿勢を持ちたい」

―高齢期のリスクは認知症だけではない。介護保険料も上がっており、不安は拭えない。

「高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるようにする『地域包括ケアシステム』の整備を急いでいる。医療や介護、行政関係者らさまざまな職種の人が情報を共有し、一人一人の在宅高齢者に最善の対応ができるようにしたい」

<広報誌「KOBE」5月号 コラム>

「金庫に何億いう金が…」

元気だった母も晩年になるといつしか現実と幻想の間を往き来するようになりました。ある日、入所していた施設を訪ねると、空っぽの冷蔵庫を指差して言いました。
 「あそこに金庫があるやろ。あの金庫の中に何億いう金が入っとんねん。あの金、全部喜造にやるわ」
母の性格と性癖を受け継いでいる私も、いつしか母のような症状を呈するようになるかも知れません。そうなったとき、もう分からないかも知れませんが、「認知症の人にやさしいまち神戸」が全面的に開花していることを期待したいと思います。必ずそうなるよう全力を尽くすことが、今の私の責務です。

神戸市長 久元喜造

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