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毎日新聞 令和元年8月15日(木)朝刊

毎日新聞 令和元年8月15日(木)朝刊

「タワマン」立地にルールを
久元 喜造 神戸市長

 大都市で林立する高層タワーマンションをめぐり、さまざまな議論が起きている。
 神戸市は問題点を整理するとともに、立地の一部規制に踏み込んだ条例を制定した。大都市の将来デザインを左右する課題として「タワマン」を考えたい。
 次々と建てられるタワーマンションは繁栄する都市の象徴のように映る。一方で、建設ラッシュを懸念する声も根強くある。
 将来発生するおそれのある高額の保有コスト負担、所有者の属性が多様であることから生じる合意形成の難しさなどである。神戸市は昨年、研究会を置き検討を進めたが、さまざまな課題が浮き彫りになった。
 都市部に集中する傾向があるタワーマンションは、街づくりの見地からも問題をはらむ。
 大都市への住民回帰は全国的な傾向だが、極めて限られた地域に過度な集住が進むことは弊害が大きい。
 短期間に人口が増加し、小学校や子育て施設の不足などが各地で生じている。また、大規模災害時にエレベーターが停止したり、水道、電気、ガスの供給がストップしたりした場合、被災した多数の居住者への対応に問題が生じるおそれがある。
 神戸は戦前から発達してきた鉄道網を軸に、沿線に市街地が形成された。都心へ人口の一極集中が進めば周辺地域で沿線人口の減少を招き、鉄道事業の採算性の悪化、交通利便性の低下、更なる沿線人口の減少という悪循環を招くおそれもある。
 また、三宮駅前近辺などに高層タワーマンションが次々に建設されれば、商業・業務機能が損なわれるおそれがある。神戸がショッピング、グルメ、アートシーンを楽しめる街であり続けるためには、都心の駅近くに過大な居住空間が生まれることは好ましくない。
 このため、神戸市は「都心機能誘導地区」を導入し、玄関口の三ノ宮駅を中心とするコアエリアで住宅建設を原則認めないことにした。
また、上記地区周辺の元町駅や神戸駅、新神戸駅を含む都心地域では、1000平方メートル以上の用地を対象に、住宅部分に使用できる容積率の上限を最大900%から、一律400%に引き下げた。これらの措置に必要な条例改正は、6月の市議会で可決された。
 神戸市は人口が減少しているため、こうした対応は人口減対策と逆行しているという指摘もある。確かに「タワマン」が建てば、住民人口の増加に寄与する。
 しかし人口定住は、都市全体で考えるべきだ。特に拠点となる駅周辺を上質で魅力ある空間にしながら、市内各地域でバランスの取れたまちづくりを進めていく必要がある。
 港湾都市・神戸は旧居留地など歴史的価値の高い建物が軒を連ね、異国情緒あふれるたたずまいが形成されている。海と山、街並みが溶け合った美しい景観に恵まれている。
 魅力的な都市であり続けるためには、さまざまな機能のバランスを図ることが欠かせない。自治体はこれまで以上にまちづくりの観点から「タワマン」と向き合う必要がある。

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