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日本経済新聞 平成30年6月18日(月)朝刊33面

時流地流
補助金という「蜜」の再考を

◆「なぜ市が丸抱えしなければならないのか」。神戸市の久元喜造市長は1985年から当たり前のように補助金で運営されてきた「神戸国際フルートコンクール」に疑問を持った。国際的に評価の高い大会だったが、市は2017年秋の第9回の開催に際して補助金約5千万円を打ち切った。

◆関係者の反発は大きかった。一方でどうすれば存続できるか、との議論も市民や地元経済界で活発になり、17年の大会は多くの市民が参加する音楽祭に衣替え。これを受け、神戸市は21年に開催する次の大会で補助金再開の方針を示した。「補助金は使う側の努力も必要」と久元氏はいう。

◆「補助金の既得権化・常態化を是正する」。財政難に悩んでいた大阪市が09年に作成した補助金見直しのガイドラインは「特定の団体に対し長期にわたって毎年度補助金が支出され続ける」という実態を指摘した。リーマン・ショック後に相次いだ自治体の補助金見直しの中でも踏み込んだ内容だったが、大胆な改革は容易ではなかった。

◆ところが11年に就任した橋本徹市長は、大阪が誇る伝統芸能、人形浄瑠璃文楽に対する補助金の大幅削減など、「聖域はない」と改革を相次ぎ打ち出した。市は各方面の批判を浴びたが、文楽が新しい観客層の取り込みなど自力再生を模索する機運にもつながった。

◆一時は中止か、ともいわれた徳島市の阿波おどりを巡る騒動も発端はやはり補助金だ。主催していた徳島市観光協会が出した損失には市が最大6億円を補償する契約があった。コスト意識がないままの運営が続けられ、累積赤字は4億円超に膨張。遠藤彰良市長はやや強引ともみえる手段で市観光協会を解散させた。

◆1年近い混乱を経て、徳島市の主導で例年通りの開催が決まったものの、なぜ問題が長年放置されてきたのか市の説明はない。文化に関わる補助金は「地方活性化」の大義名分で特に聖域になりやすい。だが、補助金をはじめ適正な距離感を保った行政には、より徹底した公平性と透明性が求められる。

(長谷川岳志)

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