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読売新聞(2015年5月28日朝刊)に、拙文が掲載されました

270528yomiurironten読売新聞(2015年5月28日朝刊)
論点  ミドリガメの脅威 対策急げ

 本来は国内にいなかった外来種が在来種を駆逐し、我が国の生態系に大きな影響を与えている。国も3月、外来種による被害防止の行動計画をまとめ、本格的な対応に動き出した。

 多様な生き物が生息してきた我が国の自然は、民話、習俗、信仰、食生活など我が国固有の文化を育んできた。生態系が危機に直面していることは、単に動植物の世界の問題にとどまらず、我が国の自然、そして文化のありように関わるという視点を持つべきだ。

 外来種による脅威の代表例が、北米原産のミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)だ。

 ペットとして人気のミドリガメは元来、ワニなどのどう猛な捕食者がいる環境で生きできたこともあり、爆発的な繁殖力を備えている。これに対し、我が国の固有種のニホンイシガメは、捕食者がほとんどいない環境で暮らしてきた。繁殖力もミドリガメには劣る。

 人聞によるミドリガメの持ち込みがなげれば、両種は出会うことも競合することもなかった。この持ち込みが、ニホンイシガメ減少の大きな要因になっていると見ていいだろう。

 対策としては、ミドリガメを外来生物法の「特定外来生物」に指定することが挙げられる。指定されると、輸入や飼育、野外への放逐、譲渡などが規制される。

 しかし、規制がいきなり全面的に適用されると、一般家庭での飼育が規制の対象となり、現在飼育されているミドリガメが河川や池に捨てられてしまう可能性が高い。

 まずは、「入り口」の対策、つまり、年間20万匹程度と推定される輸入を禁止し、販売業者など関係者の理解を得ながら、販売、譲渡の規制へと対策を広げていくことが現実的だ。

 また、輸入禁止とともに、自然界でのミドリガメの減少に取り組むべきで、自治体としても対策に本腰を入れる必要がある。

 神戸市立須磨海浜水族園では、市民が持参したミドリガメの引き取りを行っている。しかし、引き取りによる減少効果も限界があり、駆除も検討している。

 市では近く、多数のミドリガメが生息している場所を選んでモデル的に駆除を行い、効果を確認したうえで、継続的な駆除につなげていくことにしている。

 一方、ニホンイシガメについては、市民団体や高校生など、さまざまなレベルで保護や繁殖の取り組みが行われ、産卵、孵化にも成功している。いずれも人為的な環境下での管理であり、保護・繁殖したカメ野外に放つことについては、元々の産地を確認するなど、専門家の判断を仰ぐ必要がある。

 自然の生態系がどのような存在であるのか。そのすべてを人聞が解明しているわけではない。安易に動植物を持ち込む行為は生態系をかく乱させ、人間に対する脅威をもたらす可能性も否定できない。

 ミドリガメのケーズに限らず、我が国固有の生態系の保全・再生に向けて、自治体も含めた、あらゆる主体が行動を起こす時期に来ている。

久元喜造氏
神戸市長。東大卒業後、自治省入省。総務省自治行政局長などを歴任。同市立須磨海浜水族園はカメの生態研究で知られる。61歳。

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