久元 喜造ブログ

三浦展『都心集中の真実』


副題に「東京23区町丁別人口から見える問題」とあるように、区よりもさらに細かい町丁ごとに人口動向を細かく分析し、何が起きているのかを鮮やかに提示してくれます。

近年における23区の人口増加の原因としては、外国人の増加、都心における金持ちの増加、 女性、特に若い女性の増加、子どもの増加、つまりファミリー層の増加、の4つが挙げられています。
都心3区と江東区の、特にウォーターフロントでは、1980年代に端を発し、今日まで営々と高層マンションが建設されてきました。
これら地域には、高所得層が増え、23区間でも所得格差が拡大しています。

この辺りは常識的な解説ですが、筆者は、「分類不能業種が都心で増殖している」など、ユニークな視点を提供してくれます。
また、女性が長い通勤時間を嫌い、都心で働く未婚女性が隅田川沿いなどのマンションに数多く住んでいる現状にも注目します。
都心人口の増加は、職住近接や「スタイル・高価格・超都会的」消費イデオロギーへの転換も関係しています。

それでは、郊外にはまったく未来はないのでしょうか?
筆者は、自治体などの「やる気」を取り上げ、「本当に郊外の人口減少をどうにかしたいのなら、もっと本気で組織ごと変わってほしい」と訴えます。
「住宅地の中に店やオフィスが作れないなどという近代主義的都市計画思想を捨てて欲しい」と。
「郊外だから専業主婦、パート主婦でしか生きられないのではなく、正社員としても、在宅勤務、ワークシェアリング、サテライトオフィスなどをフル活用しつつ、多様な世代の男女が多様な働き方で働き続けやすい街をつくること」だと。

全く同感です。