久元 喜造ブログ

深井智朗『プロテスタンティズム』


ルターの「宗教改革」のイメージを根底から変えてしまうとともに、現代政治への示唆にも富む、刺激的な内容でした。
ルターは「プロテスタント」という新たな宗派を生み出そうとしたのではなく、カトリックの中での改革を試みた、という指摘から本書は始まります。
彼が批判したのは、贖宥状(免罪符)の販売でした。
贖宥状批判はローマ教皇や聖職者の経済的利益に関わり、政治的意味を持つに至ります。

聖書の解釈を最重要視するルターの主張は、当時の印刷技術の発展に支えられ、瞬く間に広がりました。
ローマ教皇はルターを破門にし、神聖ローマ皇帝カール5世は彼を異端と断じますが、問題はこれで解決せず、領主たちはローマ教皇、ルターのいずれの側に立つのかが問われることになりました。
ルターの死後、1555年、「アウクスブルク宗教平和」と呼ばれる決定が行われます。
領主が自分の領邦の宗教を決定できることになり、以後のドイツの各領邦は、「皇帝の古い宗教」(=カトリック)と、「アウグスブルク信仰告白派」(=プロテスタント)に色分けされていきました。

プロテスタントはドイツのみならず諸外国に広がり、そして枝分かれしていきます。
著者は、それら多様な動きを、「支配者の教会」と「自発的結社としての教会」に分かちます。
前者は、たとえばドイツ帝国において国教的役割を果たし、後者は、さらなる改革運動を各国で展開していったのでした。
このように、「プロテスタンティズムは、その後の歴史の中でさまざまな種類のプロテスタントを生み出し」ました。
複雑な内容がたいへん分かり易く説かれ、欧米近代史に対する鳥瞰図的理解を深める上でたいへん有意義でした。