久元 喜造ブログ

呉座勇一『応仁の乱』

中世史の新書としては、30万部を越す異例のベストセラーで、どこの書店に行っても、平積みです。
売れるからには、分かり易い本なのだろうと簡単に考えて読み始めましたが、「第1章 畿内の火薬庫、大和」で早くも難渋し始めました。
とにかく夥しい数の人物、地名が登場するのです。
繰り返し前に戻って人物を確認しながら読み進めましたが、正直、何度も挫折しそうになりました。

本書の基本資料は、 奈良の興福寺の門主、経覚と尋尊が残した日記です。
まず初めに登場するのは、二人の高僧が連なる摂関家のほか、学侶、衆徒、六方、国民などの僧侶です。
僧侶の多くは武装集団であり、応仁の乱の中でも重要な役割を果たしました。

そして、足利義持、義教、義政、義視、義尚、義材など足利家将軍たち、細川勝元、山名宗全などの諸大名、大名の配下にあり、あるいは独立した動きをする武士たち、貴族など膨大な数の人物が登場し、戦乱の舞台も、大和、京のほか、山城、越前、備前、伊勢など各地に及び、複雑な動きが丁寧につづられていきます。

骨肉の争いが随所に登場し、裏切り、謀殺は日常茶飯事で、土一揆も頻繁に登場し、全体を掌握する者が不在のうちのまま、応仁の乱は長々と続いたのでした。
しかし、ひらすら殺戮のみが時代を覆ったのではなく、在京武士は、貴族や五山の僧とともに、連歌や茶の湯を楽しむなど京での文化的生活を謳歌したのでした。

乱の経過を理解するのには骨が折れましたが、「第7章 乱後の室町幕府」「終章 応仁の乱が残したもの」は分かり易く、この有名な大乱が日本をどう変えたのかを理解することができました。