久元 喜造ブログ

崎谷明弘 ピアノ・リサイタル

170128-1
きょうの土曜日は、ハーバーランドの松方ホールで開催された、崎谷明弘さんのピアノ・リサイタルを聴かせていただきました。
平成28年度神戸市文化奨励賞を受賞された若手ピアニストですが、すでに大家の風格を湛えた名演でした。

プログラムは、前半が ベートーヴェンの作品で、創作主題による32の変奏曲、そして《悲愴》《熱情》の2曲のソナタが続きます。
後半は、 ブラームスのシューマンの主題による変奏曲、そして、リストのスペイン狂詩曲で締めくくられました。
ブラームスの変奏曲の主題は、シューマンの《色とりどりの作品》の第1曲から取られており、ベートーベン、シューマンからブラームス、リストへの時代の流れが明確に感じ取れるプログラム構成となっています。

作品と作曲家の個性が明確に伝わってくる演奏でした。
とくに、後半のブラームスとリストでは、明らかに演奏アプローチが異なっていることがわかりました。
ブラームスの作品は、後期のピアノ作品とはかなり異なった世界で、謎めいた響きを取り去ったシューマンの音楽のように感じられましたが、いくぶん抑制された演奏アプローチから、この曲の雰囲気が伝わってきました。
次のリストでは、一転して多彩なタッチが連続的に繰り出され、目が眩むような世界が現出して、聴き手を圧倒しました。
アンコールは、リストの小品かと想像しましたが、ドビュッシーの「月の光」。
これまた世界が一変し、何とも微細で柔らかな響きが会場を支配しました。
素晴らしいピアノの世界を堪能させていただき、 ありがとうございました。