久元 喜造ブログ

成田一徹さん『神戸の残り香』

東京にいた時、何かの機会に、神戸市の東京事務所の方から 「神戸の残り香」 についてお聞きしたことがありました。
私が興味を示すと、さっそく、神戸新聞に連載されていたコピーを届けてくださいました。
成田一徹さん が切り絵を描かれた一枚一枚は、とても懐かしく、成田さんが添えられた文章も丹念に読みました。

私は、2012年11月に神戸に戻ってきましたが、残念ながら、成田一徹さんは10月に急逝されていて、お会いすることは叶いませんでした。
昨年の暮れ、私が「神戸の残り香」について話していたことを、成田さんの奥さまがお知りになり、この年の暮れに刊行された『NARITA ITTETSU to the BAR』をお届けくださいました。
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神戸をはじめ、東京、大阪など全国のバーの風景が描かれています。
残念ながら閉店になっているお店もありますが、「Abuはち」「YANAGASE」「SAVOY北野坂」「Sunshine Bar」などが健在です。

その後、『神戸の残り香』は、2006年に神戸新聞総合出版センターから単行本として出版され、2013年に増刷されていたことを知りました。
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頁を開くと、往時の神戸の香りが立ち上ってくるような気がします。
帯には、
「この街には、もっと大人のにおいが漂っていたんじゃないか。」
との、成田さんの言葉が記されています。神戸の街に対する成田さんの遺言のように感じられました。
時代とともに街が変わりゆくのは避けられませんし、変化が求められる面もありますが、街づくりにあたっては、神戸の街の「大人の匂い」を大切にしていきたいと思います。