久元 喜造ブログ

小田切徳美『農山村は消滅しない』

三宮のジュンク堂で、小田切教授の『農山村は消滅しない』 (岩波新書)を購入した次の日、総務省のエレベーター前で、小田切先生にばったりお会いしました。
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明治大学農学部教授の 小田切徳美 先生には、定住自立圏の懇談会や、地方制度調査会などでご指導をいただいてきました。
豊富なフィールドワークを重ねながら、我が国の農山漁村の現状やその構造的要因について、緻密な分析を続けてこられました。

本書は、増田寛也さんの 『地方消滅』 (2014年11月1日のブログ) に対する批判から始まり、中国地方を中心に、我が国の農山村が、過疎化、高齢化の波にさらされながら、したたかに生き抜いてきた歩みが語られていきます。
そして、困難な状況にあって、地域社会の維持に工夫をこらし、前を向いて進んできた、たくさんの事例が紹介されています。
これらの事例が例外的な成功談ではないことは、近年、若い世代の間で、農山漁村での暮らし方への関心が急速に高まっている社会現象からも窺えるところです。

3月1日の読売新聞文化面は、「増田レポート 反論と補完」と題し、濱田武士氏が本書を取り上げていました。
濱田氏は、対立軸に触れながら、本書に「『地方消滅』の見落としを補完する役割」を見いだしておられます。
濱田氏は、「『地方消滅』の読了後には是非読んでほしい」と結んでおられますが、両方を読んだ私にも、対立軸ではなく補完を見出す方が有益であるように感じられました。
農山村の役割について、改めて考えさせられるとともに、前に向かって進んでいくエネルギーをいただきました。
とりわけ「定住・移住の推進」に関わっておられるみなさんに、お勧めしたいと思います。