久元 喜造ブログ

NHK『巨大災害』火山特集の先見性と問題点

御嶽山の突然の噴火により、かなりの方が亡くなられ、負傷されているとの報道には胸が塞がります。
専門家も含め、だれも予想もしていなかった事態だったと思います。

そのような中にあって、NHKが、9月21日、NHKスペシャル『巨大災害・火山大噴火』を放映し、火山の危険性について指摘していた事実は、特筆されると思います。
この番組では、米国イエローストンやイタリアのヴェスヴィオス火山など巨大噴火がメインテーマでしたので、今回の御嶽山の噴火を予見していたわけではありませんが、専門家は、水蒸気爆発など御岳山の噴火とも関連する内容を指摘しており、番組の先見性には驚かされました。
NHKスペシャル制作・取材陣の問題意識、科学的知見、取材力と番組構成力は、高く評価されるべきだと思います。

しかし、たいへん残念なやりとりがありました。タモリ氏と女性アナウンサーとの次のような会話です。

タモリ氏「なるべく早く予測ができるようになるのと、その少し平穏な間に、火山性の観光地に行って楽しむしかないんじゃないですかね」
女性アナウンサー「そうですね」

番組では、観光地化されている火山のありようについても警鐘を鳴らすことは十分出来たはずです。
「楽しむしかない」というコメントは理解できません。
著名タレントを起用し、内容がよく理解出来ていない女性アナウンサーと組み合わたことにより、すぐれた番組の価値が損なわれてしまったのは残念でした。
巨大噴火が来る前に火山を楽しむしかない、と国民を煽り、危険に陥れているという自覚はなかったのでしょうか。
NHKは、まだ 佐村河内問題 の失敗に学んでいないと思います。
視聴率ばかりを重視した安易な番組づくりを見直し、社内の優れた人材の良識や知見をもっと大切にすべきだと感じます。