久元 喜造ブログ

深紅の薔薇に呼び起こされる記憶④

60本の深紅の薔薇は、今なお元気で、私の部屋を華やかにしてくれています。
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今はカラオケはほとんど歌いませんが、昔、『百万本のバラ』を歌っていた頃がありました。

小さな家とキャンバス ほかには何もない
貧しい絵描きが 女優に恋をした
大好きなあの人に バラの花をあげたい
ある日街中の バラを買いました

百万本のバラの花を
あなたにあなたにあなたにあげる
窓から窓から見える広場を
真っ赤なバラでうめつくして

この歌の作曲は、ライモンズ・パウルス。
ラトビアの作曲家で、ラトビアが旧ソ連から独立した後、教育大臣になった芸術家です。
歌詞は、女優に恋をしたある「絵描き」が、何もかも売り払ってバラの花を買い、女優がいる部屋の窓の下を埋め尽くし、女優がバラの花々を眺めるているさまを遠くから観るだけで満足して、そっと立ち去っていく、という内容です。
女優は華やかな人生を送り、「貧しい絵描き」は 孤独な日々を送ります。けれどバラの思い出は、「絵描き」の心から消えることありませんでした。
もの悲しいけれど、ロマンチックな歌詞です。

しかし、この歌のもとの歌詞は、もっと悲劇的な内容だったと、ラトビアを何回か訪れたことのある、家内から聞いたことがあります。
本来のタイトルは、『マーラが与えた人生』。
「マーラは娘に命を与えたけれど、幸せをあげ忘れた」という内容です。

この歌の背景には、ラトビアの人々の苦難に満ちた歴史があるようです。
あまりにも救いのない内容だったので、少しでも慰めがある、『百万本のバラ』の物語に作り替えられたのかもしれません。