久元 喜造ブログ

行革時代に、仕事を前に進めるために。

少し時間が経ってしまいましたが、1月6日の御用始めの日に、神戸市役所で、幹部職員のみなさんに挨拶をさせていただきました。
お話ししたことどおりではありませんが、申し上げたかったことは、以下のようなことです。

行政組織では、どんなに立派なアイデアや政策が浮かんでも、それを具体化し、実現していくためには、どこかの組織がその仕事を担当する必要がある。

自分の経験では、役所の組織が新しい仕事を引き受けることは、年々、難しくなっている。
かつては、各省の部局、課室は、仕事の奪い合い、つまり、積極的権限争いをしていた。
しかし、もうかれこれ20年近く前から、反対の現象 ― 消極的権限争いをするようになってきている。
いわば、仕事の押しつけ合いだ。

国民、住民にとって必要な仕事が、役人の間で押し付け合いされ、ときとして宙に浮いてしまうということは、実に情けないことだ。
この情けない話を、個々の役人のやる気や気概に還元することは可能だが、そうとも言い切れない。
役人間の仕事の押し付け合いには、もっと構造的な背景があるからだ。

根本的な背景は、どんなに大きな、そして、大事な仕事でも、霞ヶ関をはじめ、規模が大きな行政組織では、仕事の単位は、基本的には、課あるいは室であり、どんなな仕事でも、課あるいは室に下ろされるという慣行にある。

一方、もう30年近く、国も地方自治体も、行政改革に取り組んできた。
仕事は増える一方だが、組織や人員は減らされてきた。それも、画一的な方法で。

このような状況で長く仕事をしてきた役人、とくに、仕事の中核を担う課長や室長の行動は、どのようになるか ― 新しい仕事は、どんな手段を講じても引き受けない、という行動様式が合理的だ。
なぜなら、新しい仕事を引き受けても、人員が増えることはまず、ないし、予算が増えることも、まず、ない。
増えたとしても、翌年以降になる。
また、果敢に、新しい、そして、困難な仕事を引き受けても、人事評価に反映されることも、まず、ない。
給料が増えるわけでもないし、何らかの待遇の改善があるわけでもない。

私の経験は以上だが、神戸市の行政組織は、どのようにして、新しい仕事にとりくんできたのか、どのようにして、このような組織上の課題に向き合い、解決してきたのか ― 是非、教えてほしい、課題があるなら、いっしょに考えていきましょう、と申し上げたのでした。