久元 喜造ブログ

美智子皇后・インドへの旅

天皇皇后両陛下が、インドへの旅に出発されたというニュースに接しました。
両陛下は、皇太子夫妻時代の1960年にインドを訪問されており、53年ぶりのインド訪問とのことです。

天皇陛下は、インド訪問にあたり、ご感想を公にされていますが、その中で、かつてのインド訪問について触れられ、
「皇后はかつて学生時代にネルー首相の「父が子に語る世界歴史」に出会っており,ネルー首相との会話は非常に心に残ることであったと思います」
(As a student, the Empress had encountered Glimpses of World History, a book written by Prime Minister Nehru in the form of letters he had sent to his daughter Indira, and I am sure the Empress has a lasting memory of Her conversations with him.)
と述べておられます。

当時皇太子ご夫妻がインドに訪問されたとき、インド首相であったネルーは、かつて英国との独立闘争を率いた英雄でした。ネルーは、英国官憲の手で、何度も投獄され、獄中で娘のインディラに宛て、膨大な数の手紙を書き送り、世界の歴史を語り続けました。
そして、これら約200通の手紙は、後に、「父が子に語る世界歴史」として、まとめられ、刊行されました。
美智子皇后は、学生時代、この著書を読まれたものと思われます。

私は、小学生のとき、子ども向きに編集され、1冊にまとめられたネルー著「父が子に語る世界歴史」を読みました。なぜか、この本の中の、
「ひとりでいることは、とても危険なことだ。人間にとっても、国にとっても」
という一節が記憶に残っています。
日本の歴史についても、記されていて、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康も登場しました。ただ、学校で習った内容とは、かなり違った印象でした。

1998年、NHK教育テレビで、美智子皇后の講演が放映されました。この講演は、インドで開催された国際児童図書評議会 でのビデオによる講演で、英語で行われました。
タイトルは、「子供の本を通しての平和-子供時代の読書の思い出-」。
美智子皇后が、少女時代に読まれ、心に刻まれた読書の記憶を語られたものでした。
私は、その高度な内容と奥行きの深さに驚嘆したことを、鮮明に覚えています。番組はビデオに撮り、DVDに変換して、大切に保存しています。

天皇皇后両陛下のインドへの旅が、懐旧に抱かれ、実り多いものであることをお祈りしたいと思います。