月刊事業構想 2017年6月号


月刊事業構想2017.6 P.104~105「地域特集 地域イノベーターの育て方」
神戸市 世界的なVC「500 Startups」との連携

神戸は「日本のシリコンバレー」

全国の自治体によって、起業家支援が行われている中で、神戸市が存在感を増している。
シリコンバレーを本拠に、60ヵ国以上で展開するVC、500 Startupsとの連携を実現するなど、独自の施策で教育プログラムを充実させ、「日本のシリコンバレー」を目指している。

 「神戸市と500 Startupsの連携により、世界の中心地であるシリコンバレーの新しい風を神戸から日本全体に吹かせたい」
 2017年4月10日、東京・渋谷で開かれた「500 Kobe Accelerator」の記者会見に臨んだ久元喜造・神戸市長の言葉は自信に満ちていた。
 会見に同席したのは、米シリコンバレーに本拠を置き、60ヵ国以上で1800社以上を支援するベンチャーキャピタル(VC)、500 Startupsのアジア・中東担当責任者、ザファー・ユニス氏だ。
 会見では、アーリーステージ(成長初期)のスタートアップ約20~25社に対して、事業成長を加速させる2ヵ月半のプログラムを神戸で2017年7~10月に実施することを発表。併せて、体験版の1日プログラムを東京、福岡、大阪で開くことも発表された。
 自治体が世界的なVCと連携する目新しさもさることながら、特筆すべきは参加事業者を神戸市内に限るのではなく国内外から広く募っていることだ。
 「神戸市が目指しているのは、地域の企業や研究機関、VCが有機的に結び付いて起業家が育つエコシステムを神戸につくりあげること。長期的な視野に立って、神戸を日本におけるシリコンバレーのような地域にしたい」と、神戸市新産業創造担当課長の多名部重則氏は語る。
 

2年で「起業のまち・神戸」に

 神戸市がスタートアップ支援施策に力を注ぎ始めたのは、わずか2年前。きっかけは、久元市長が副市長時代に「行政におけるIT活用の推進」を掲げたことだ。その推進に欠かせないIT事業者の多くが、若い経営者が率いるスタートアップであることから、「市としてもスタートアップ支援に取り組む必要性を感じました」(多名部氏)という。
 「起業しやすいまち・神戸」を掲げ、2015年春から始まったスタートアップ支援施策は3つ。1つ目は、神戸・三宮のビル内に設けた「神戸スタートアップオフィス」でのアクセラレーション(起業家育成)プログラム。ビジネスプランコンテストを勝ち抜いたチームに対し、資金調達や企業とのマッチングなどサポートを行う。
 2つ目が「シリコンバレーへの派遣交流で学ぶ若手IT人材育成事業」。毎年、高校、大学生20人をシリコンバレーに派遣し、現地の起業家やVC等と交流し、起業家マインドの醸成をはかる。
 そして3つ目が、「小、中、高、大のキャリア教育」。授業を通じ、働く選択肢の中に起業があることを伝えている。

VCとの連携が実現した理由

 それでは神戸市は、世界的な有力VCである500 Startupsとの関係づくりをどのように実現したのか。
 2015年6月、久元市長をはじめとする神戸市関係者は、本場のスタートアップ支援を学ぶため、シリコンバレーを視察。その際、「現地のVCに片っ端からアポイントを申し込んだ中から、約束を取り付けることができたのが500 startupsでした」と、多名部氏は振り返る。
 500Startupsは、有望なスタートップに出資するだけなく、世界各地で起業プログラムや投資家・大企業向けの教育プログラムを展開。進出先では、地域の関係者を有機的に結び付け、スタートアップが育つためのエコシステムを土壌づくりから行っている。
 当時は、500 startupsが日本での活動拠点を探していたタイミングだった。シリコンバレーでの訪問を機に、神戸市との協議がスターと。1ヵ月後に500 startupsのザファー・ユニス氏が神戸を訪れ、話し合いは一気に進んだ。
 日本での拠点を東京ではなく神戸にすることは、500 startups内でも議論があったと見られるが、多名部氏は「神戸市のスタートアップ支援の取り組みが包括的であることに加え、こちらの熱意が伝わったことで、強力なパートナーになり得ると評価してくれたのだと思います」と語る。
 「自治体とVCは、事業への考え方から施策の進め方まで、対極にあると見なされるような存在です。だからこそ、500 startupsから学ぶころは大きいと考えます」

参加企業の約半数が資金調達

 連携の第1弾として、2016年8~9月の6週間、「500 Kobe Pre-Accelerator」が神戸市内で実施された。参加したのは、国内外から応募のあった206社から選ばれた21社。
  500 startupsの協力の下、世界各地でスタートアップのメンターとして活躍する25人が神戸に集結。1対1のメンタリングを通じて、世界を舞台にビジネスをするマインドの醸成や事業の再構築、VCや大企業から投資を呼び込むための実践的なノウハウまでを徹底的に学んだ。
 終了3ヵ月後には21社中約10社がVCや企業から投資・出資を受けたという。
 神戸市は2017年度、500startupsプログラムの本格展開に1億5900万円の予算を付けた。プログラムの内容・期間の充実を進めるほか、投資側である地元企業向けの教育プログラムもスタートする。
 「参加者同士のコミュニティもおのずと形成され、成功した企業が今度はサポートする側に回ることも出てくるでしょう」
 この2年の神戸市のスタートアップ施策のスピード感、推進力には目を見張るものがある。
 「1年目は『なぜ神戸で?』という驚きを提供し、2年目の今年は東京でPRの機会を設け、神戸以外でも体験版プログラムを始めます。毎年何か新しい驚きを提供し、多くの人の耳目を集め、500 startupsのブランド価値を高めたいと考えています」
 地方自治体と世界的なVCが協力することで、何が生まれるのか。500 startupsとの連携が、真の評価を得るのはこれからだ。

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