「月刊神戸っ子 2017年4月号」のインタビューを掲載しました

月刊神戸っ子 2017年4月号(P.24~P.31)
分野を越えて交差する参加型イベント「078」いよいよ開幕!

 第1回クロスメディアイベント「078(ゼロ・ナナ・ハチ)」が5月6日・7日の両日開催される。ここに至った経緯やイベントの概要、期待するところなど、久元市長、藤井実行委員長、そして「COMIN’KOBE’17」実行委員長の松原さんにお話しいただいた。

「078」名誉実行委員長
神戸市長
久元 喜造さん

「078」実行委員長
神戸大学大学院システム情報学研究科准教授
藤井 信忠さん

「COMIN’KOBE’17」実行委員長
株式会社パインフィールズ代表取締役
松原 裕さん

若者が神戸に集まる「COMIN’KOBE」とタイアップ

―期待が膨らむ「078」ですが、開催に至った経緯は。

久元 名誉実行委員長を務める私も大きな期待を寄せています。開催までの経緯は、実際に運営にあたっておられる実行委員長の藤井先生からご紹介いただけますか。

藤井 阪神・淡路大震災からの復興の時期を過ぎ、これからどうするか?と考えていたとき、「神戸2020ビジョン」の中の、「若者に選ばれるまち」というテーマに私は教育者として大変興味を抱きました。毎年、教え子の若者が神戸から出て行ってしまうのを目の当たりにしてきたからです。この若者たちが神戸に根付いてくれるような仕掛けを考えなくてはいけないと切実に感じていました。そんな中、昨年は、アメリカテキサス州オースティン市で毎年開かれている大規模イベント「サウス・バイ・サウスウエスト」に企業さんと共同出展しました。そこに来られていた神戸市や企業の方々とお会いし、「こんなイベントを神戸でぜひやりたいですね」というお話をしたのがきっかけで、民間主導で始まった企画にお声がけ頂きました。「COMIN’ KOBE(カミングコウベ)」とタイアップして、幅広い年齢層を対象にした様々な分野のイベントを交差させ、神戸を代表する記号のひとつ「078」と題して開催することになりました。「COMIN’ KOBE」は今年で13年目を迎え、4万人以上の若者が訪れる音楽イベントです。実行委員長の松原さんからご紹介ください。

松原 阪神・淡路大震災から10年目の2005年に立ち上げたロックフェスティバルです。私は中学3年生で震災を経験しましたが、当時は事の重大さを十分には理解できていなかったのが正直なところです。大人になり外の世界に出たとき、たくさんの方に心配していただき支援いただいていることを知りました。そこで、何か恩返しができないかという思いとロックイベントを掛け合わせてスタートさせました。

藤井 協力いただけて心強い限りです。10年以上継続してこられたというのはすごいことですが、紆余曲折あったと思います。

松原 1年目は東遊園地で開催したのですが、なにぶんロックですので騒音などの問題が起き、二転三転したのち、3年前から神戸国際展示場と市民広場、ワールド記念ホールで開催させていただいています。オーディションを通過した全国から集まる約100組のインディーズアーティストが参加し、ここから大きく羽ばたいて行き、今や参加したら大変な騒ぎになるであろうミュージシャンがいるのもうれしいことだと思っています。

久元 恥を忍んで申し上げると、「COMIN’ KOBE」というイベントで多くの若者が全国から神戸に集まってきているという事実を私は知りませんでした。しかし私に限らず、神戸で広く知られているかといえば、必ずしもそうではなさそうです。全国的に知名度が高く、内容も素晴らしい「COMIN’ KOBE」をベースにして、音楽、映画、IT等のいろいろな分野を組み合わせ、市民も参加できて発信力のあるイベントに発展させようと、有志の皆さんの力で計画が進みました。

ぶつかり合って、そこから新たな価値が生まれる

―クロスメディアイベント開催に込める思いは。

久元 若者に選ばれるまちの要素は二つあると思います。ひとつは、大都市において日常生活が楽しく快適に送れること。子育てや教育、住まい、公共交通などの日常性には、行政の役割が非常に大きいですね。ところが毎日快適な生活が送れるというだけで、都市が若者に選ばれるわけではありません。もうひとつの要素に非日常性があります。未知のものに出会い、刺激と刺激がぶつかり合い、新しいものが生まれる。「078」は都市の非日常性を神戸らしいやり方でクローズアップするものです。

藤井 私は実行委員長になってから多くの方にお会いしました。神戸にはパワーに満ち溢れた方がたくさんおられるにもかかわらず、皆さんがバラバラに活動されていて情報発信力が必ずしも高くないと感じました。
 例えば「078」で柱に据えている「音楽」「映画」「食」「ファッション」「IT」という5本柱の分野で活躍されている方々が集まって、非日常がぶつかり合い、新しい価値が生まれるというプロセスがなかったように思います。そこで分野ごとに業界を引っ張っておられる方に副実行委員長になってもらってそれぞれ進めていただき、そこからどのようにぶつかり合いの場所を作り、神戸ならではの新しい価値を付け加えていくかが実行委員長に与えられた使命だと考えています。単に活動報告の場ではなく、参加する市民の皆さんからパワーをもらって次の一歩を踏み出すきっかけにできたらいいなと思っています。

久元 「078」の特徴は、異なる分野のイベントが一体化して都心で行われる点、そして五感で感じることができるという点です。今はインターネットを通じて、様々な感動や刺激を受け、コミュニケーションはできますが、五感を統合して感じることができるのは現実世界だけです。例えば、神戸には素晴らしい食があり、海の香り、汽笛の音など五感が刺激されるものがたくさんありますが、このイベントで、それらの感覚感性が研ぎ澄まされ、ワクワクする時間と空間を体験できればと、私自身もワクワクしています。

松原 私にとっては、ロックミュージックは当たり前のものでも、皆さんから見れば偏った世界なのかも知れません。「COMIN’ KOBE」がプラットホーム的な役割を果たすイベントになればいいなと考えていましたので、「078」と連動することによって、もっと神戸のワクワクするものが広がっていけばいいと思っています。若者の言葉で言えば“イケてるまち”の“アガるイベント”になると期待しています。

藤井 試行錯誤しながら「COMIN’ KOBE」がつかんでこられた若い顧客層に私たちが訴えかけ、前日から神戸へ来て、できれば宿泊もしてもらって、いろんなものに触れて神戸の魅力に気づいてもらうきっかけになればうれしいですね。

若者のためだけじゃない。老若男女みんなでワクワク

―各会場の概要は。

藤井 メイン会場には3カ所を予定しています。「みなとのもり公園」は音楽イベント、「東遊園地」は、幅広い世代を対象に音楽、子ども、食、映画を中心にした家族全員で楽しめるバラエティーに富んだイベントを企画しています。両会場の中間に位置づける「デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)」では、毎年開催していた「神戸ITフェスティバル」を前身とし、「都市生活×IT」をひとつのテーマにしてよりクリエイティブで生活に根差した企画を予定しています。
 ITは既に目的ではなく生活に溶け込んできています。今から必要なのはIoTのプラットホームを使って価値を見出していくことですから、分野を越えた価値を生み出す触媒としてITを捉えていこうとしています。各分野で相談いただき、掛け合わせ、都市生活を送る上での日常、非日常が何なのかを考えるような場としてカンファレンスや最先端のIT技術を感じてもらえるトレードショーなどを企画しています。

―今後の広報活動は。

藤井 実行委員として参画頂いている神戸新聞さんを中心としたメディアの皆さん、協賛企業、団体のご協力を得ながら、どう進めようかと検討し始めたところです。「COMIN’ KOBE」ではどんなふうに?

松原 今はSNSを活用していますが、当初は出演アーティストに集まってもらって、駅前でビラを配るなどアナログなことをやっていましたね(笑)。

久元 アナログな広報活動の効果もばかにはできません。神戸市としても、「みんなの掲示板」を増やすことにしています。掲示板は貼り出しに行き、見に行くというリアルな世界です。人が動くということはとても大切なことだと思います。こんな昔ながらの広報もぜひ組み合わせていきましょう!

―それぞれのワクワク感は。

松原 神戸でしかできない表現に僕としても注目しています。音楽やIT、食などをどう掛け算していくのか、一人ではできなかったことが実現しそうです。全国から神戸にやって来た若い人たちの「このまち、カッコいいな」という表情を見るのを楽しみにしています。

久元 「COMIN’ KOBE」はぜひ観に行きたいですね(笑)。カンファレンスにも注目しています。刺激的な議論に期待しています。自然にみんなが納得することも大事ですが、非日常的なイベントの中では、徹底した想像力を羽ばたかせることも大事だと考えています。例えばこれからの社会の有り様を考えるとき、徹底的な「ユートピア」として想像するのもひとつの方法です。あるいは、ジョージ・オーウェルの『1984年』のように、決してあってはならない社会「ディストピア」を想像することによって、私たちが今、何を追求するべきなのか考える方法もあります。いろいろな方法で社会や文化、芸術を考えるカンファレンスにしてほしいと思っています。

まちに出てみよう。そして失敗を恐れず試してみよう

―これからの神戸を「若者に選ばれるまち」にするためには。

松原 やはり僕は音楽が好きなので、「音の鳴っているまち」がカッコいいなと感じます。そんなまちに出会ったとき僕自身は「住みたいな」と思います。たとえ音楽にあまり興味がない人にでも、文化に意識を向けているまちだなと思ってもらえることが大事です。面白くて、ユーモアのあるまちになってほしいですね。

久元 行政が「音楽を許可します」という堅苦しさではなく、「街中に音楽が溢れるまち」になればいいですね。

藤井 若者が失敗できるまちにしたいですね。自分がやりたいことを試す社会実験や社会実証を気軽にできるきっかけを得られるまちが若者に選ばれるまちだと思います。「やってみなはれ!」精神で、失敗したら大人がサポートすればいい。もちろん失敗だけで終わってもらっては困るのですが、失敗の中からしか成功は生まれません。残念ながら今の大学はそういう場にはなっていません。「078」をそういうプラットホームに育てて、私は教育者として学生をどんどん出していき、アイデアを社会に発信しフィードバックを得られる、学びの場として活用していきたいと考えています。

久元 全くその通りですね。若者がチャレンジできる雰囲気のまちにしなくてはいけません。そのためには発見が必要ですから、若者に向けて「まちに出よう」というメッセージを発信しましょう。神戸に限らず日本全国の都市は、海外の主要都市に比べて人通りが少ない。ネットの影響はもちろんありますが、それだけではなく、日本の都市には何が足りないのか?を考える第一歩としてまちに出なくては!新しい空気を感じられ、おもしろい発見があり、元気がもらえる。そんなまちにしていくことが、若者に選ばれるまちになることです。

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