10月24日の日経新聞に、神戸の水素エネルギーに関する記事が掲載されました

281024nikkei
日経新聞 平成28年10月24日(月)朝刊 31面
水素エネで地域を浮揚
輸入基地や製造設備、自治体競う

 次世代エネルギーの本命といわれる水素をめぐり、地方自治体の動きが活発だ。水素には供給体制の構築など課題も多く、本格的な普及には時間がかかる。それでも地球温暖化防止の新たな国際的枠組み「パリ協定」は近く発効する見通しで、脱炭素化の動きは世界的に広がりそう。来るべき水素社会に向け地歩を固めようと、企業と連携した取り組みが各地で進んでいる。
 阪神大震災から21年。公共施設などの復旧に充てた災害復旧債を今年度に完済する神戸市の久元喜造市長は「新たなステージにのぼりたい」と強調する。そのステージの一つが「水素社会」の実現だ。
 同市は2020年度稼働を目指し、神戸港にある人工島の市有地約1ヘクタールを使い世界初の水素輸入基地を設ける計画を進めている。川崎重工業や岩谷産業などと連携し、年内にも岸壁などの整備を始める。国の支援を受け今年度だけで約7億円を投じる方針だ。
 オーストラリアで価格が安く低品質の褐炭から水素を製造し、液体に圧縮して船で輸入基地に運ぶ。火力発電所約1基分の需要があれば自然エネルギーよりも割安で発電できるという。

(産業転換にらむ)
 神戸市はさらに水素を活用した地域産業の構造転換もにらむ。水素の貯蔵などには特殊な技術が必要になる。昨年秋にはバルブや圧力容器など水素に関連する中小企業の「水素クラスター勉強会」を設け、現在21社が参加。市は「地域に中小企業の技術を生かす道が広がる」(環境局)と見込む。造船や鉄鋼など従来型産業依存からの脱却は長年の課題だ。
 水素は利用時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、省エネにつながる効率的な発電が可能だ。さらに様々な物質から調達できるなど資源小国の日本にとってはメリットが大きい。このため国は14年の閣議決定で水素利用推進を打ち出している。
 ただ水素の代表的な利用例である燃料電池車(FCV)はトヨタ自動車とホンダが販売しているが、水素ステーションが少ないため本格的な普及には時間がかかりそうだ。20年までに4万台、30年までに80万台程度を普及させるのが国の目標で、自治体の取り組みは将来の需要拡大をにらんだ布石だ。
 水素の生産から家庭や事業所への供給までを想定し6つのプロジェクトを進めているのが川崎市だ。東京湾臨海部に進出している企業と実証実験を始めている。福田紀彦・川崎市長は「水素社会の実現をリードし、世界屈指の水素タウンになる」と意気込む。
 このうち千代田化工建設とは水素サプライチェーンの構築を進めている。水素を含む原料化合物を海外から輸送。臨海部のプラントで水素を取り出し、市内各地に設ける水素ステーションから企業や家庭に供給し発電に利用する。昭和電工とは「水素地産地消モデル」として、アンモニアの製造設備を活用し市内で発生するプラスチックごみから水素を取り出す実験にも着手した。
 太陽光で発電した電力で水素をつくって貯蔵し、燃料電池で電気や温水を供給する東芝の自立型水素エネルギー供給システムは、川崎港の市民交流施設「川崎マリエン」、横浜市の横浜港流通センター、長崎県佐世保市の観光施設ハウステンボスで実証実験が始まった。今年度中には東日本旅客鉄道(JR東日本)が南武線の武蔵溝ノ口駅のホームに設置し駅の電力をまかなうほか、水素エネルギーの普及啓発にも活用する。

(山口・周南でも)
 水素に熱い視線を送っているのは大都市だけではない。山口県は「水素先進県を目指している」(村岡嗣政知事)。瀬戸内にはトクヤマ、東ソーなど化学大手が立地し、全国の水素発生量の1割を占めているほか、高純度の水素を作れる強みを生かそうとしている。
 同県の先陣を切るのが周南市で、10月13日から全国発の燃料電池(FC)ゴミ収集車が走り始めた。11月からは無料でFCVのカーシェアリングを始める予定だ。
 同市はこれまでにも市役所に飲料用の水素水サーバーを設置、地方卸売市場ではFCフォークリフトの実証実験を始めている。「水素の生産、輸送、活用までサプライチェーンを構築しているのは周南市だけ」(経済産業部)と自負しており、次はFCバスを走らせる計画だ。
 山口県や下関市も公用車にFCVを導入するなど利用の機運は盛り上がっているが、県内の登録はまだ十数台。中国地方にある水素ステーションは岩谷産業が設けた周南市の1つだけ。原油安やハイブリット車の普及・進化もあり、水素の普及は国や県の補助金頼みという構造から抜け出せない。それでも「水素は県が持つ将来有望な資産」(村岡知事)。人口減少と経済縮小に悩む地域にとっては経済浮揚の頼みの綱になっている。

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